研究課題/領域番号 |
19K05322
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
坂下 弘人 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00142696)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 原子炉過酷事故 / デブリベッド / 沸騰伝熱 / 限界熱流束 |
研究実績の概要 |
福島第一原子力発電所の事故以降,現行の軽水炉では,過酷事故が発生した際に溶融炉心が圧力容器底部を貫通する前に格納容器内を事前水張りする過酷事故緩和策が検討されている.この場合,落下した溶融炉心は格納容器底部のコンクリート床上に堆積して溶融プールを形成するとともに,溶融炉心の一部は水中を落下する途中で分散・固化して粒子化する.溶融プール上面は冷却により固化し表面に固化層(クラスト)が形成され,水中に分散した粒子状デブリはクラスト上に堆積して粒子層を形成する.溶融プールの崩壊熱は,クラスト表面で水の沸騰によって除熱される.ただし,沸騰熱伝達には限界熱流束(Critical Heat Flux,以下CHFと略す)と呼ばれる除熱限界が存在し,クラスト表面からの熱流束がCHFを超えると,クラスト表面は蒸気膜に覆われ除熱不能となる. 本研究の目的は,クラスト面上に堆積した粒子層の崩壊熱による発熱がクラスト表面でのCHFに与える影響を明らかにすることにより,事前水張りによる過酷事故緩和策の有効性を検証することにある.本年度は,昨年度に作成した実験装置を用いて,伝熱面上に堆積した粒子層を内部発熱させて伝熱面上のCHF測定実験を実施した.粒子には3mmから15mmの鋼球を用い,高周波誘導加熱装置より内部発熱させた.その結果,いずれの粒子径の場合もCHFは粒子層の内部発熱量に依存しない一定値となることが明らかになった. この結果は,伝熱面上のCHFが粒子層の発熱量の増加に伴って単調に減少すると予測する既往モデルの妥当性を否定するものであり,クラスト面上に堆積するデブリの粒子径が3mm以上の場合は,格納容器内での事前水張りは有効な過酷事故緩和策であることを示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終的な目的は,伝熱面上に堆積した粒子層の発熱が伝熱面からの沸騰除熱限界(CHF)に与える影響を実験的に明らかにするとともに,CHF発生機構を解明することで,過酷事故緩和策の有効性を検証することである.本年度は,伝熱面上に堆積させた粒子層を発熱させてCHF測定実験を実施した.その結果,粒子径が3mm以上では,CHFは粒子層の発熱量に依存しない一定値を取ることを明らかにした.以上,今年度の実験により,本研究の目的のかなりの部分を達成することができた. 以上,本研究は,当初の予定通りおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,粒子層の内部発熱がクラスト面上のCHFに影響を及ぼさないとする昨年度の結果がより小さな粒子径の場合にも妥当か否かを検討するために,直径2mm以下の粒子を用いて昨年度と同様のCHF測定実験を実施する. また,透明導電膜を蒸着させたサファイア板を伝熱面に用いて,その上に粒子層を堆積させた体系で伝熱面裏面から沸騰様相を観察する可視化実験を実施する.その際,伝熱面表面が蒸気に覆われている場合に全反射する条件で光源を入射する.これにより,伝熱面上のドライアウト挙動が粒子層の有無により異なるのか否か,異なる場合には粒子径がどのような影響を与えるのか,などを明らかにする. 以上,3年間の研究を通して,事前水張りによる過酷事故緩和策が有効である燃料デブリ径の範囲を明らかにするとともに,従来のモデルに変わる新たなCHFモデルの提案を行う予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた可視化実験の準備作業を次年度に繰り越したため,次年度使用額が生じたものである.次年度に,実験装置の製作費と,実験に関連する消耗品(主に可視化実験用透明伝熱面の作成費)に使用する予定である.
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