研究課題/領域番号 |
19K05323
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉田 健太 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10581118)
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研究分担者 |
嶋田 雄介 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20756572)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 3次元 / 腐食 / マルチスケール |
研究実績の概要 |
本研究では放射化した原子力構造材料に対して、電気化学的に制御した腐食を導入できる反応槽および3次元的に伝播する界面腐食の構造と化学組成をナノメートルスケールで可視化・定量分析できる分析装置群からなる「腐食界面3次元ナノ分析法」を開発する。そして、所有する中性子照射材に「腐食界面3次元ナノ分析法」を適用し、腐食試験前後の転位ループのサイズを1nmの分解能で3次元定量解析し、その分布を腐食割れ先端からの距離で整理することで、照射誘起応力腐食割れにおける転位ループなどの照射欠陥と粒界腐食との複合的影響の有無を検証する。さらに、腐食界面近傍の溶質原子クラスターの酸素組成および空孔クラスター分布の照射量依存性を定量解析することで、腐食中のSC、ナノボイドの挙動を3次元空間で定量解析することを目的とする。 本年度は、フェライト系ステンレス(SUS430)に中性子照射するための海外炉利用照射の準備を行った。並行して、フェライト系低銅合金鋼の中性子照射材およびフェライト系高銅合金鋼の中性子照射材に本課題で開発した「腐食界面3次元ナノ分析法」を適用し、炭化物や粒界の影響を3次元空間で定量解析を適用した。H82F鋼など次世代炉・革新炉材料として注目される実用原子炉圧力容器鋼の微細組織観察もはじめ、転位など内部応力の分布と腐食組織との関係性が明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
暴風災害によって利用施設の利用が停止する等の実験計画上の遅延要因が発生したが、オンライン上でできるモデルシミュレーションや非放射化試料のでの実験を積極的にすすめ、本年度は7件の原著論文が発表できた。 2021年1月に放射性同位体を取り扱える施設が再開してからの集中的な実験遂行で計画通りに、複数の実用鉄鋼材料(腐食済み、中性子照射材)のマルチスケール3次元電子顕微鏡分析を行い、最終年度の腐食促進機構の議論につながる初期データを獲得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、SUS430の中性子照射を海外炉照射プログラムを活用して行う。また、これまでにフェライト系低合金鋼およびF82H鋼(未照射および中性子照射材)に腐食界面3次元ナノ分析法を適用した実験データを解析し、転位ループや転位ネットワークなどの照射欠陥が腐食反応でどのような促進機構を有するのかを定量解析する。また、腐食界面近傍の溶質原子クラスター(SC)の酸素組成やその分布を問題なく3次元定量解析を行う。最終年度までの達成項目を明確にして、進捗を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ肺炎の影響で、東北大学の放射線管理区域の利用停止期間が延長した。その実験に関する物品費と旅費が2021年度に繰り越ししたため。現在は、施設再開されているので、最終年度の執行額に変更はない。
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