本研究では、ウラン検出センサーへも適用可能な、ウランに選択的なペプチドを設計を行った。本研究では通常採られるようなペプチドのリン酸化によってウランへの親和性を高める手法は敢えて採らず、ウランの赤道面にペプチドの5つの酸素原子を配位させ、UO22+イオンを赤道面全体から掴む(=水分子を配位させない)立体設計を考えた。このような戦略の元、まず分子シミュレーションによりペプチドを設計することを試みた。2つのアミノ酸を二座で、1つのアミノ酸を単座で、合計5つの酸素をウランに配位させる方針の元、そして、ウランに配位させるアミノ酸および繋ぎのアミノ酸を交互に配列させる方針の元、量子化学計算で得られた知見を元にペプチドにUO22+イオンを配位させて周期境界条件下で古典分子動力学(MD)計算を行い、その計算結果を精査することによって、ペプチドをウランの赤道面を取り囲むように配位させる戦略を採った。その結果、ウラン捕捉に適した環状ペプチドと、カルシウム結合タンパク質カルモジュリンの「ハンド」からヒントを得た33アミノ酸残基からなるペプチドを新たに提案した。前者については、赤外線吸収分光を用いた実験によりウラン補足の有効性が確認された。後者については、フラグメント分子軌道計算を用いた解析により、カルモジュリンの「ハンド」よりもはるかに親和性が高いペプチドであることが示された。また、ウラン捕捉後のペプチドの構造解析により、ペプチドの二次構造や疎水性残基の位置が極めて重要なことが明らかにされた。
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