研究課題/領域番号 |
19K05330
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡本 一将 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (10437353)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | レジスト / 極端紫外線 / 放射線化学 / 脱プロトン反応 / 半導体微細化 / 電子線 / パルスラジオリシス |
研究実績の概要 |
最先端の半導体デバイス(集積回路)製造に波長13.5 nmの極端紫外線(EUV)を露光用線源として用いたEUVリソグラフィの導入が始まっている。露光されるパターニング材料としては、高感度の化学増幅型レジストが従来のリソグラフィ技術同様用いられている。しかし、最小加工寸法の要求値が今後10 nm以下と厳しくなる中で、レジスト性能として高感度、高解像度、低ラフネスを同時に満たすことが大きな課題となっている。化学増幅型レジストでは露光および加熱によって酸を生成し、ポリマーの極性変化によって現像液に対する溶解性を変化させる。レジスト性能向上のための指針としては、化学増幅型レジスト中で露光直後に生成する初期酸生成量を増加させることが有効と考えられている。そこで本研究では、ジフェニルスルホン誘導体を酸生成促進剤添加として用いて、化学増幅型レジストのEUVと電子線リソグラフィにおける高性能化および酸生成促進剤が果たす、脱プロトン反応の促進をはじめとするレジスト中での増感メカニズムの解明を目的として研究を行った。 今年度はジフェニルスルホンの放射線誘起初期過程を明らかにするために、電子線パルスラジオリシス法による時間分解過渡吸収分光測定を行った。密度汎関数法を用いた量子化学計算と組み合わせることによって、ジフェニルスルホンのラジカルイオン種のダイナミクスについて明らかにした。特に従来室温下で生成が困難とされてきた複数の芳香環間の電子の非局在性を示すダイマーラジカルアニオンがジフェニルスルホンに含まれる二つのベンゼン環と硫黄原子間を介して生成し、この活性種が酸発生剤に電子を受け渡すことでレジスト内での増感機構に大きな役割を果たすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにジフェニルスルホンのEUV露光に対する感度向上効果、ならびにジフェニルスルホンのラジカルイオン種のダイナミクスを明らかにした。生成する放射線誘起反応中間体が果たす酸生成促進剤添加の効果およびその機構の一端について明らかにすることができている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、引き続き酸生成促進剤によるEUVおよび電子線レジスト増感作用の解明および機構の詳細を明らかにしていく。また、新たな酸生成促進剤として、ジフェニルスルホン構造を含むポリマーであるポリスルホンを適応する。さらに、ポリマーの種類、ならびに化学増幅型レジストに含まれる酸生成促進剤、光酸発生剤、クエンチャーの濃度を変化させたレジスト性能評価を行うことにより、酸生成促進剤の果たす機能の詳細および手法の改良に関する研究を引き続き予定している。
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