研究課題
原子炉水化学、重粒子線治療、ナノテクノロジー等の量子ビーム応用分野では、量子ビームによるイオン化直後の現象の解明の重要性が指摘されている。そこで、本研究では、量子ビーム誘起による超高速反応の測定を実現するために、レーザー変調電子ビーム圧縮方式を開発し、アト秒の時間分布を有する電子ビームの発生を目指す。レーザー変調電子ビーム圧縮方式では、アンジュレータ周期磁場および短波長・高電界であるレーザー電場により、入射電子ビームのエネルギーを変調することで、アト秒電子ビームの密度変調へ変換することを目指す。2021年度(令和3年度)は、レーザー変調効果を確認するためのエネルギー分散測定系と電子ビーム試験を行った。レーザー変調の効果を確認するための、偏向磁石によるエネルギー分散測定系を開発した。レーザー変調ではアンジュレータとレーザーによって電子ビームにエネルギー変調を付与し、スライス(進行方向の一部)の軸方向位相空間分布の回転により、電子ビームを圧縮する機構であるため、エネルギー変調(電子ビームエネルギー分散の変化)を測定する事が重要である。ネオジム磁石の対により約0.7 Tの磁場を発生し、下流の自由空間も組み合わせて、エネルギー分解に寄与する転送行列のR16は26 mmであることも分かった。同軸でフェムト秒レーザーと電子ビームをアンジュレータに通過させて、エネルギー分散の顕著な増加は確認されていないが、電子ビーム圧縮条件の最適化(精密な時間同期)、レーザー強度の増加が重要であると考えられる。電気光学結晶を用いたシングルショット電子ビーム計測も展開しており、レーザー変調との組み合わせ(同期時間ジッター計測)も展開できる状態にある。
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AIP Advances
巻: 11 ページ: 125319
10.1063/5.0067586
https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/bsn/e-beam.html