研究課題/領域番号 |
19K05333
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安田 和弘 九州大学, 工学研究院, 准教授 (80253491)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 格子欠陥 / 照射損傷 / 透過型電子顕微鏡 / 電子励起 / 原子力材料 / 酸化物セラミックス / 窒化物セラミックス / カソードルミネッセンス |
研究実績の概要 |
酸化物/窒化物セラミックスは,核燃料や核変換処理材料として期待される重要な原子力材料である。これらの材料は、線質(すなわちエネルギー損失過程)やエネルギーが異なる種々の放射線が存在する複合照射環境で使用され,そのために材料に誘起される微細構造変化はこうした複合放射線の重畳効果(シナジー効果)大きく影響を受ける。本研究では、放射線損傷過程を電子励起損傷と格子励起(はじき出し損傷)のシナジー効果と捉え、これを点欠陥挙動の立場から明らかにすることを目的としている。本年度の研究成果の概要を以下に記す。 1)高速エネルギー重イオン照射によりイオントラックを導入したCeO2試料に200 keV~1250 keVの電子を追照射し、微細構造変化を「その場」観察した。電子照射により形成される欠陥はイオントラックとは異なるものであり、その密度やサイズなどは電子エネルギーならびに温度、予照射の高速イオン照射量に依存することがわかった。 2)ZrNのはじき出しエネルギーをab initio分子動力学法により評価した。本試料のはじき出しエネルギーの評価値は計算および実験法共に報告値がなく、本研究によるものが初めでである。ZrおよびN原子のはじき出しエネルギーをそれぞれ一次はじき出し原子の方位の関数として評価すると共に、原子衝突過程を詳細に追跡し、格子間原子の安定位置を明らかにした。 3)超高圧電子顕微鏡内で電子照射に伴うカソードルミネッセンスを動的に取得し、CeO2の点欠陥形成ならびにその価数に関する情報を取得した。Gd2O3をドープした試料について、ドープによって導入される酸素空孔の効果と点欠陥形成の関係についての研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従って研究を推進する。 1)酸化物ならびに窒化物試料に対して電子的阻止能および弾性的阻止能を系統的に変化させたイオン照射を継続して行い、照射欠陥の性状を調べると共に、電子の追照射を行って選択的に導入した点欠陥(陰イオン、陽イオン)との相互作用を調べる。 2)超高圧電子顕微鏡内「その場」カソードルミネッセンス法を用いた点欠陥の蓄積過程を継続して調べる。特に3価陽イオンをドープした時の照射欠陥形成と点欠陥価数の相関に関する研究を進める。 3)ZrNの電子照射に伴う照射欠陥形成過程を電子エネルギーの関数として調べる。ZrおよびN原子のはじき出し損傷速度と照射欠陥形成の関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症拡大防止のために、学会・研究集会等が中止となり予定していた学会参加旅費を使用しなかったこと、および同様の理由から国外から共同研究者を招聘するための旅費を使用しなかったため。
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