福島第一原発の廃炉関連の研究では、「炉内材料の腐食劣化挙動評価」や「核燃料デブリの解析」が重要である。特に、事故時の構造材(ステンレス材)や燃料被覆管のジルコニウム合金(Zry-2)は、メルトダウンするほどの高温と水素爆発が起こるほどの多量の水素に曝されている。それらの材料では、高温酸化と水素浸透による水素脆化が同時に進行していると考えられる。一方で、放射線による分析作業者の被曝低減と作業の効率化が求められている。その評価・解析では、化学形態分析、化学構造分析、同位体分析を実施する必要があるが、これら3種を同時分析できる装置は存在しない。我々は、同位体分析の得意なSIMSと、化学形態分析と化学構造分析が得意なラマン分析器とをハイブリッド化することを提案する。SIMSに構造的な制約があるため、ラマン分析器の作動距離は、20cm程度(超長距離作動型)必要であると共に、高面分解能が要求され、マイクロフォーカス化が不可欠である。SIMS分析中に、in-situで、リアルタイムで同時に、ラマン分析できれば、両者の不得意部分を補うことができる。本研究では、超長距離作動型でマイクロフォーカス化が可能なラマン分析用の光学系を開発し、分析作業者の被曝低減と作業の効率化を図る。具体的には、マイクロフォーカス化のための専用の試料ステージを製作し、実用的な作動距離を20cmとしてマイクロフォーカス化を試みる。光学系の検討を行った結果、既存の「後方散乱方式」が最適であると判断した。しかしながら、既存の光学系では、マイクロフォーカス化が限界にきていると考え、新しい評価手法で、ビーム直径の定量的に評価することを試みた。その結果、新しい評価手法の下で、ビーム直径は約34umのマイクロフォーカス化を達成できることが分かった。
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