研究課題/領域番号 |
19K05342
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
天野 由記 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 環境技術開発センター, 研究副主幹 (60421674)
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研究分担者 |
鈴木 庸平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00359168)
岩月 輝希 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 幌延深地層研究センター, 部長 (00421678)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 微生物群集 / 地下水 / 鉄代謝 / バイオマグネタイト / メタゲノム解析 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度メタゲノム解析を実施した地下水試料を対象として、バイオマグネタイト等の鉄のナノ鉱物粒子を生成する微生物の集積培養を実施した。培養条件の選定にあたり、メタゲノム解析データに基づく代謝機能の推定結果を参照にしながら、無機・有機基質や電子供与・受容体等の添加条件を選定した。集積培養期間中は、16S rRNA遺伝子をターゲットとするDNA解析手法により、培養液中の微生物種組成の変化についてデータを取得した。また、集積培養液中の微生物細胞や鉱物粒子をX線回折装置および電子顕微鏡にて観察・分析し、鉄のナノ鉱物粒子の生成の有無を確認した。さらに、地下水中の鉄のナノ鉱物粒子の存在量、成分、サイズに関する基礎情報を取得するために、数十~数百リットルの地下水からネオジム磁石を用いて鉄鉱物粒子を回収し、電子顕微鏡にて観察・分析を行った。その結果、1年3ヶ月経過した集積培養液中において、鉄の磁性鉱物の一種であるグレイガイトが検出されたが、マグネタイトは検出されなかった。集積培養液中では、Spirochaetes門のRectinema cohabitansやGamma Proteobacteria綱のPseudomonas knackmussiiに近縁な種の他、Delta Proteobacteria綱に属する種が優占種として検出されたことから、これらの種が培養液中でグレイガイトの生成に関与している可能性が推定された。このうち、Delta Proteobacteriaに属する種は既知の培養株との相同性が89.7%であることから、新種の可能性が高いと考えられる。一方で、ネオジム磁石を用いて回収した地下水試料中からは、マグネタイトおよびグレイガイトはほとんど検出されず、調査対象とした花崗岩地下水中においては、鉄のナノ鉱物粒子の存在密度は極めて低いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画されていたバイオマグネタイト等のナノ鉱物粒子を生成する微生物の集積培養に着手し、集積培養液中の磁性鉱物形成の有無を確認するとともに、鉱物形成に伴って増殖した微生物種を推定することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
鉄のナノ鉱物粒子が生成された微生物の集積培養液を用いて、セレンなどの核種と鉄粒子および微生物細胞の相互作用について評価を進める。また、集積培養液中の微生物種についても、単離培養に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、参加を予定していた国際会議や調査のための出張を取止めたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、令和3年度分経費と合わせて、令和3年度に予定している国際会議へ参加に係る費用や地下試料採取のための調査に係る費用として使用予定である。
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