研究課題
花崗岩および堆積岩の地下深部から採取した地下水中の微生物について,磁性粒子を生成する微生物の集積培養を継続しておこなった。複数の培養条件下にて集積培養した溶液について微生物群集組成を解析した結果,磁性粒子が形成された培養液中では,Delta proteobacteria綱に属する菌の他,Spirochaetes門Rectinema cohabitansに近縁な種,Pseudomonas knackmussii あるいはPseudomonas stutzeriに近縁な種の増殖が継続して確認された。X線回折法による分析結果から,生成された磁性粒子はgreigiteであり,これらの菌がgreigiteの形成に寄与することが示唆された。ゲノム解析の結果から,これらの菌はマグネトソーム形成に関連する遺伝子を有していないことが確認されており,また走査型および透過型電子顕微鏡観察の結果からも,細胞内部の微粒子やそれらの直鎖上の配置は観察できなかったことから,これらの鉄ナノ微粒子は細胞外で形成されているものと推測された。また,培養の過程でgreigiteはpyriteに変化することが推察された。生物由来の鉄ナノ鉱物粒子を用いたセレンの収着試験を行った結果からは,添加した亜セレン酸溶液は速やかに還元されて亜セレン酸(+4)から赤色アモルファスの単斜晶セレン(0)が形成されることが示された。また,還元された一部のセレンは,培養過程で形成された黄鉄鉱に収着することが明らかになったが,greigiteへの収着は確認できなかった。地下環境においては,廃棄物からセレンが溶存態として溶出した場合でも,微生物により生成されたpyriteや微生物自体のセレン還元代謝反応により速やかに不溶化されると考えられる。
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mBio
巻: 12 ページ: e0052121
10.1128/mBio.00521-21