研究課題/領域番号 |
19K05344
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平野 伸夫 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (80344688)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 長石 / 熱発光 / 放射線照射 |
研究実績の概要 |
本年度は,天然のカリ長石および斜長石を用いて自然熱発光および放射線照射後の人工熱発光についての検討をおこなった. その結果,まず,自然熱発光(NTL)について,同一地点で採取された石英の熱発光強度と比較した場合,発光強度は小さくなるものの熱発光現象自体は観察できること,この発光強度についてはカリ長石の方が斜長石よりも大きい事が判明した.加えて,同じ長石でも採取場所によって最大発光温度などが若干異なる様子が観察された.また,これら長石の熱発光の一定温度における減衰(等温減衰)を測定した結果,ほぼ石英と同じ傾向を示したことから,長石の自然熱発光については,測定可能であれば石英と同様に地熱探査に使用可能である蓋然性が高いといえる.次に,人工放射線照射による熱発光(ATL)については,石英と比較して放射線感度が極端に低い(石英と同量の放射線量を照射した場合,熱発光量が極端に小さい)事が判明した.また,この感度は長石の種類によって異なり,カリ長石の方が斜長石よりも高い.これは,長石NTLにおける長石種類による発光挙動の違いを示していると考えられる.これらの放射線感度が地熱影響によって異なるようであれば,NTLを測定できない長石についても地熱探査に使用できる可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで天然長石ではほとんど観察データがなかった自然熱発光(NTL)について,熱発光を観察可能であることが判明した.等温減衰実験の結果からは,発光の検出が可能であれば石英を使用する場合と同様のプロセスで長石NTLを地熱探査に応用可能である蓋然性が高まった. 人工熱発光(ATL)については,長石の種類により熱発光に対する放射線感度に差があることが判明し,カリ長石の方が斜長石よりも感度が高いことが判明した. これらの結果から,カリ長石を採取・使用できるような場所であれば,地熱探査への応用が非常に期待できるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
長石の自然熱発光(NTL)については基本的なデータが収集できたと考えられる.よって,今後は人工熱発光(ATL)による挙動変化(放射線量・加熱時間や条件の異なる天然長石による発光挙動の違い)などについてより詳細な検討をおこなう. 加えて,長石NTLがある程度測定できる見通しが付いたことから,予定を前倒しし,NTLについてエルサルバドル地熱地帯の長石試料について測定と結果の検証をおこなう.
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