最終年度は、X線CT装置によるハイドレート模擬堆積物の観察用に設計・製作したセルと圧力・温度の保持機構を用いて、総合的な実験を行った。その結果、温度管理は問題なく行うことができ、X線CT装置によるハイドレート模擬堆積物の観察も鮮明に行うことができたが、炭素材の圧力保持性能に課題があることが明らかになった。そこで、X線透過部を気体・液体の不浸透性の高いガラス状炭素素材で作製し、精密加工が必要な配管との接続部等はPTFE素材で作製する改良をセルに施すことで、X線の透過性を確保しつつ、気密性と強度を有したセルを完成させた。 研究期間全体を通じて、多孔質媒体のハイドレート生成・分解を観察する実験手法として、模擬堆積物としては粒径の揃ったガラスビーズが最適であること、水リッチ環境下でのハイドレート生成にはセミクラスレートハイドレートが、ガスリッチ環境下でのハイドレート生成には代替フロンハイドレートが適当であることを明らかにするとともに、ガラス状炭素素材を取り入れたX線CT観察用セルと圧力・温度保持機構からなる総合的な観察システムを開発・構築した。以上の成果は、ハイドレート堆積物における熱・物質移動特性のモデル化に資する、ハイドレートの微視的な孔隙レベルでのモホロジーに関するデータの取得を可能にするものであり、自然界に存在するハイドレートの生成メカニズムや、メタンハイドレート層からのガス生産挙動の解明に貢献することが期待できる。
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