研究課題/領域番号 |
19K05349
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
藤原 惠子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助手 (50253175)
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研究分担者 |
中塚 晃彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80294651)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Csイオン交換 / CHA型ゼオライト / K-AM2 / XRD |
研究実績の概要 |
福島第一原発の汚染水の放射性元素除去剤として現在使用されているCHA型ゼオライトの水熱合成条件とCs交換能力を調べた。K-CHAの水熱合成実験では、検討したいずれの条件においてもアモルファス相が生成した。Na-CHAの水熱合成実験では、Si/Al比が1.94~2.25の範囲ではCHAとゴビン沸石との混合物が生成された。単相のCHAを得ることはできなかったので、東ソー製のK-CHA (K4[Al4Si8O24]・10H2O)を用いて、Cs交換を行った。K-CHA0.5gに0.01~1.0Mの各濃度に調製したCsCl水溶液を加え、25,60,80℃で振とう処理を行い、Cs交換体(K4(1-x)Cs4x[Al4Si8O24]・yH2O)を作製した。粉末XRDの結果、得たすべての試料はCHAの単一相であった。Cs交換率(x)はCsCl濃度が0.1Mまでは急激に高くなっていくが、その後は一定になった。25,60,80℃の3つの温度でイオン交換をした結果、各濃度での最大交換率は25℃で0.63、60℃で0.77、80℃で0.77となった。次に、細孔径が大きなAM2型多孔性K珪チタン酸塩(K-AM2)の水熱合成条件とCs交換能力を調べた。K-AM2における水熱合成条件時の最適な仕込み組成比は、K2O/TiO2=5かつTiO2/SiO2=0.23であった。合成した単相のK-AM2 [(K2TiSi3O9・H2O)]0.5gに0.01~1.0Mの各濃度に調製したCsCl水溶液を加え、25℃と80℃で振とう処理を行い、Cs交換体[(K2(1-x)Cs2xTiSi3O9・H2O)]を作製した。25℃ではCs交換率(x)は0.01~0.02の範囲内にあり、ほとんど交換されなかった。一方、80℃では最大でx=0.13(CCs=1.0Mのとき)までCsイオン交換特性が改善された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東ソー製のK-CHAおいて、交換処理温度80℃、濃度1.0Mの時、最大のCs交換率(x)は0.77であった。同じ条件の場合、Na-GTSにおいては、xの値は完全なCsイオン交換に相当する1.0とほぼ一致した。これより、現在、汚染水の放射性元素除去剤として使用されているCHAよりNa-GTSのほうが、Cs交換率が良いことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
実験の結果、AM2型多孔性K珪チタン酸塩(K-AM2)は、最大でもCs交換率(x)= 0.13であった。これは、CsイオンがKイオンよりイオン半径が大きいためであると示唆される。汚染水で問題となっている放射性物質のSrイオンは、Csイオンよりイオン半径が小さい。そこで、K-AM2を用いて、塩化ストロンチウム水溶液の濃度および振とう処理温度などを系統的に変化させてSr交換体を調製する。さらに、東ソー製のK-CHAを用いても同様に、塩化ストロンチウム水溶液の濃度および振とう処理温度などを系統的に変化させて試料を調製する。それぞれ調製したSr交換体については、原子吸光分析法、XRD、TG-DTAを用いた分析、評価を行なう。 我々の研究室では、これまでにNa-GTSの作製条件の検討を行い、既報のものよりも良好ではあるが、結晶性の良い試料が作製できているとは言い難い。結晶性の良い試料の作製は、その物質本来の性質を知る上で重要である。今回、結晶性の良いCs-GTS [Cs3HTi4O4(SiO4)3・4H2O]の作製に成功した。このCs-GTSをNa交換することで結晶性の良いNa-GTSを作製し、Na交換特性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、国内外の学会が中止またはリモート開催となり、出張費を使用する機会が極端に少なくなったため、旅費を繰り越さざるをえなかった。 繰り越した助成金は、2021年度に開催予定の環太平洋国際化学会議の旅費に使用する予定である。
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