海洋エネルギーのうち,潮流エネルギーは,潮流の変動が規則正しく起こる双方向の往復流のため,信頼性の高いエネルギー源とみなされている.高出力の大型潮流タービンを目指すには,羽根車直径を超えた受流面積の増大が有効であり,そのためにタービンまわりに集流装置を設置して集流による高出力化を検討する.また本研究では,固定されたまま双方向流れに対応できる往復流対応の集流装置とタービンを採用する.タービンのまわりに設置する集流装置の内部に旋回流れを促す工夫を施せば,タービンにおける角運動量変化を増すことができるので,タービンの高出力化を導くことができる.そこで本研究では,潮流タービンを高出力化するための,往復流対応の旋回集流装置を用いた潮流発電システムを研究開発することを目的とした. これまでに開発した集流装置に案内羽根を設置し,数値流体解析とモデル実験を行って旋回集流装置の効果を検証した.実験においては,旋回集流装置の実験モデルを製作して回流実験装置により実験的検証を行った.その結果旋回集流装置により,タービン内部へ潮流が流れ込む流量を増すことができ,すなわち集流効果を高めることができ,高出力化への道筋を付けることができた.また,旋回集流装置を考慮した反動型プロペラを,ポテンシャル流れ理論に基づいて設計・製作し,回流実験装置により実験的検証を行った.その結果,旋回集流装置と反動型プロペラの組み合わせにより,タービン内部へ潮流が流れ込む流量が衝動型プロペラと同様に大きく,加えてタービン効率を衝動型プロペラの場合より高めることができ,さらなる高出力な発電システムへの見込みを得た.さらに数値流体解析において,さまざまな広がり角の集流装置に対して,案内羽根の曲がり角を主なパラメータとして最適化を行い,最も入口角運動量が大きくなる案内羽根形状を設計した.
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