研究課題/領域番号 |
19K05356
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
内田 悦生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40185020)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 花崗岩 / 熱水性鉱床 / インドシナ半島 / 鉱物 / 超臨界熱水溶液 / イオン交換平衡 / ベトナム / ジルコンU-Pb年代 |
研究実績の概要 |
2019年度は野外調査として、ベトナムのクイニョン周辺に分布する古生代から中生代にかけて生成されたと考えられる花崗岩類を対象に調査を行った。調査では、試料採取を行うとともに帯磁率測定を行った。合計18個の試料を採取した。採取した試料に対しては薄片を作製し、顕微鏡観察を行った。また、カナダのActivation Lab.に試料を送付し、全岩化学組成分析を行った。これに加え、総合地球環境学研究所においてNd-Sr同位体分析を行った。これらの結果から、クイニョン周辺の花崗岩類は、時代を問わず地殻物質の影響が大きいことが明らかになった。また、地殻物質の影響が大きい花崗岩類ほど、帯磁率が小さくなる傾向が明らかになった。 これに加え、以前にカンボジア北東部で採取した深成岩試料に対してジルコンU-Pb年代測定を行った。測定は東京大学理学系研究科地殻化学実験施設において行った。以前行ったRb-Srアイソクロン法では測定誤差が大きかったり、あるいは複数の岩体のデータを用いて年代を求めたが、今回の測定では各深成岩体の正確な年代を求めることができた。 上述の研究と同時に超臨界条件下における鉱物と塩化物水溶液間における2価金属元素の分配実験を行った。2019年度は珪亜鉛鉱との間における多元素同時分配実験を行った。実験対象鉱物として珪亜鉛鉱を用いた理由は2価金属が入るサイトが4配位であり、今までの実験からこの場合には亜鉛は負の分配異常を示さないことが期待されたためである。実験は500~800度、100MPaにおいて行った。珪亜鉛鉱はいずれの条件下でも安定であった。また、温度の上昇とともに分配係数-イオン半径曲線の勾配が緩やかになることが明らかにされた。亜鉛の分配に関しては予想していたこととは若干異なり、いずれの温度条件下でも若干の負の分配異常を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
深成岩に対する野外調査は予定通りに行われ、その後の薄片作成、前がん及び鉱物化学組成分析ならびにNd-Sr同位体分析も順調に行われた。ただし、Rb-Srアイソクロン法を用いた年代測定は必ずしも満足のいくものではなかったため、今後、ジルコンを使用したU-Pb年代測定を行う予定である。 以前にサンプリングしたカンボジア北東部の深成岩に対するジルコンを用いたU-Pb年代測定は予定通りに終了し、今現在、国際誌に投稿する原稿を準備中である。 鉱物と熱水間における多元素同時分配実験も順調に行われたが、予想とは若干異なり、亜鉛が若干の負の分配異常を示したため、今後このことに関する考察を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度では深成岩類、主として花崗岩類の調査を2019年度に引き続きベトナムで実施する。調査は、ベトナム中央に位置する街であるコントゥムの周辺に分布する深成岩類を対象に実施する。採取したサンプルに対しては薄片観察、全岩および鉱物化学組成、Nd-Sr同位体測定、さらに可能であればジルコンU-Pb年代測定を行い、コントゥム地塊に存在する深成岩類の年代や成因を明らかにする。ジルコンU-Pb年代測定に関しては2019年度にクイニョン周辺地域において採取した深成岩類に対しても行う予定である。 また、鉱物―熱水間における多元素同時分配実験に関しては、今までに実験対象としたことのないホウ酸酸塩であるフォンセン石(Fe2+2Fe3+BO5)等を取り扱い、珪酸塩鉱物、複合酸化鉱物、硫化鉱物、砒化鉱物等との比較・検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度では超臨界熱水条件下での実験で使用する金パイプの再生加工を行わなかったため若干の残金が生じた。コストを抑えるために2020年度に2019年度分とまとめて金パイプの再生加工を行う予定であるが、2019年度の残金はこのための費用として使用される予定である。
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