研究課題/領域番号 |
19K05356
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
内田 悦生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40185020)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 花崗岩 / 熱水性鉱床 / インドシナ / 鉱物 / 超臨界熱水溶液 / イオン交換平衡 / タイ / ジルコンU-Pb年代測定 |
研究実績の概要 |
2020年度ではベトナム中部近くの町であるコントゥム周辺に分布する深成岩を対象に野外調査を行う予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により海外での調査を行うことができない状態であったため、調査を断念した。それに代わって、以前に調査を行ったタイの南東部で、カンボジア南西部の延長部に分布する花崗岩類に対し、ジルコンU-Pb年代測定を行った。その結果、多くの花崗岩類は三畳紀の年代を示したが、一つの花崗岩類では白亜紀の年代が得られた。また、タイの花崗岩類に対し、全岩化学組成分析および鉱物化学組成分析を行い、カンボジア南西部に分布する花崗岩類と比較し、対象とした両国の花崗岩類はIタイプ、イルメナイト系列、REEパターンにおける明確なEuの負の異常、黒雲母組成がFeに富んでいることなどにおいて共通しており、タイ南東部の花崗岩類は、カンボジア南西部の花崗岩類と大変似ており、その延長部として考えられることが明らかになった。 他方、鉱物と塩化物熱水溶液間における二価金属イオンに対する同時分配実験では、ゲルスドルフ鉱(NiAsS)および閃亜鉛鉱(ZnS)を用いて500~800℃、100MPaの条件下で実験を行った。これらの鉱物に対する分配傾向は、今までに実験を行ってきた硫化鉱物、硫砒化鉱物および砒化鉱物と似ており、共有結合性の強い鉱物に対する分配は電気陰性度に強く依存し、電気陰制度の大きなNiおよびCoがこれらの鉱物に入りやすく、電気陰性度の小さなMgはこれらの鉱物に入りにくいことが明らかになった。また、Znに関しては6配位席を持つ鉱物では負の分配異常を示すが、4配位席を持つ閃亜鉛鉱ではイオン半径および電気陰性度に従った分配傾向を示し、負の分配異常を示さないことが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外での花崗岩類に対する野外調査に関しては新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響を受け、行うことができなかった。そのため、新たな地域での調査・研究はできなかったが、すでに野外調査を行い、サンプルを所持しているタイの南東部に分布する花崗岩類に対してジルコンを用いたU-Pb年代測定を行うことができ、カンボジア南西部に分布する花崗岩類との関係を明らかにすることができた。 他方、鉱物と塩化物水溶液間における超臨界条件下における2価金属イオンに対する同時分配実験では、ゲルスドルス鉱と閃亜鉛鉱を用いて実験を行うことができ、順調に実験を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度では2020年度に調査予定であったベトナム中央部に位置するコントゥム周辺に分布する花崗岩類を対象に野外調査を実施する。採取したサンプルに対しては薄片観察、全岩および鉱物化学組成分析、およびNd-Sr同位体測定を行い、コントゥム地塊に存在する花崗岩類の生成年代や成因を明らかにする。また、以前に試料採取を行ったカンボジア南西部に産する花崗岩類に対してジルコンを用いたU-Pb年代測定を行う。 他方、鉱物―熱水間における多元素同時分配実験に関しては、かんらん石を実験対象鉱物として選び、その出発物質の化学組成(Mg/Fe比)を変化させながら700℃、100MPaの条件下で実験を実施し、組成変化と元素の分配挙動との関係に関する研究を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はベトナムのコントゥム周辺に分布する花崗岩類に対して野外調査を行う予定であったが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により海外調査を行うことができなくなり、その旅費分が余ってしまった。この額は2021年度に行われる海外での花崗岩類の野外調査に使用する予定である。
|