2021年度ではベトナムのコントゥム地域において花崗岩類の調査を行う予定であったが、新型コロナウイルスの世界的感染が続いたため、現地調査を行うことができなかった。そのため、今までに採取した花崗岩試料に対し、総合地球環境学研究所においてNd-Sr同位体比測定を行うとともに東京大学の平田研究室においてジルコンU-Pb年代測定を行った。 Nd-Sr同位体測定はタイの西部花崗岩に対して行った。求められたRb-Sr年代値を用いて補正を行ったNdの同位体比の初生値はどの試料においてもほぼ同じであったが、Sr同位体比の初生値は磁鉄鉱系花崗岩で低く、イルメナイト系花崗岩で高くなっており、イルメナイト系花崗岩において大陸地殻物質の影響が大きいことが明らかになった。 ジルコンU-Pb年代測定はカンボジア南西部の花崗岩類に対して行った。Heの供給不足からすべての試料に対して測定を行うことはできなかったが、多くの花崗岩が295Ma~190Maの古い年代を示したが、Phnom Da花崗岩は75Maの若い年代を示した。前者は、インドシナ地塊とシブマス地塊の衝突に関連して生成された花崗岩であり、後者は古太平洋プレートの沈み込みに関連して生成された花崗岩であると考えられる。 他方、花崗岩の研究とともに超臨界熱水条件下における鉱物と塩化物水溶液間でのイオン交換平衡実験を行った。2021年度では対象鉱物としてかんらん石を選び、出発物質のMg-Feの比率を変化させて700℃、100MPaの条件下で実験を行った。その結果、2価金属イオンはイオン半径が小さいほどかんらん石に入りやすく、また、出発物質の鉄含有量が多い程、他のイオンが入りやすくなることが明らかになった。また、Znに関しては4配位を好むことから他の2価金属イオンと比べてかんらん石に入りにくく、負の分配異常を示すことが明らかになった。
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