研究課題/領域番号 |
19K05357
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
香村 一夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10434383)
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研究分担者 |
大和田 秀二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60169084)
肴倉 宏史 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 室長 (70331973)
栗原 正典 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70609304)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 最終処分場 / 都市鉱山 / レアメタル / 採鉱 / 物理選鉱 / 逐次抽出 |
研究実績の概要 |
地球上の資源は有限である。よって、消費・廃棄された資源を回収し再利用することは持続可能な社会をつくるために必須である。本研究ではとくに「消費されたレアメタル資源の回収」に焦点をあてている。日本におけるこれらのメタル類の再利用に関する現況は、携帯電話・カメラ・PC等の基盤類や電池からの回収が主であり、これは「廃棄物処理フローの中流部」にあたる。一方、本研究では「フローの下流部」にあたる最終処分場からの回収をめざしている。そして最終的には、「最終処分場都市鉱山学」の理論的体系化を試みる。 具体的には、①最終処分場メタルリッチゾーンの鉱床学的・資源経済学的な位置づけ、②メタルリッチゾーンの位置特定のための非破壊探査法の開発、③埋立層内メタル濃集部の回収方法の開発、④回収物から効率的に有用金属類を選別する技術の開発、である。①②については、本研究課題応募以前にすでに終了している。但し、①については、さらに中国・九州地方の最終処分場埋立コアを加えて、分析・検討を試みた。③については、大規模な掘削をせずにメタルリッチゾーンに水を圧入し、ピンポイントでメタル回収する方法を考案した。その技法に対して、埋立層内流体化シミュレーションを実施し、注入する水圧や適正水量の検討を試みた。今後、最終処分場埋立サイトにおいて、考案・設計した技法の現場適応実験を試みる。④については、最終処分場埋立コアの分析検討結果に基づいて、およそ100試料を選出し、重力選別・磁力選別・浮遊選別およびそれらの組合せによる選別を試み、濃縮率のよいメタル類の検討を行っている。 以上の結果から、各メタル類の濃縮率・最終濃度を算出するとともに、品位率を求めた。このようなプロセスを経て、検討対象とする最終処分場埋立層の都市鉱山としての有望度を検討可能となり、これらの項目を総括・検討して「最終処分場鉱山学」として確立したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄に記した通り、最終処分場埋立層から有用なレアメタル類を回収するフローは、一般の金属鉱山開発と類似している。それらは、①各処分場埋立層に賦存するレアメタルの種類・含有濃度・賦存化学形態の解明(鉱床学)、②濃集ゾーンの位置を非破壊で特定する技術開発(探査工学)、③濃集ゾーンからメタルを回収する技術(採鉱学)、④回収した掘削物からメタル類を濃縮する技術(選鉱学)、⑤「最終処分場都市鉱山の資源経済的視点からの評価法」および「鉱山学としての体系の確立」から構成される。 前述の③④⑤が本研究課題で解明したい事項である。③では、埋立層内メタルリッチゾーンへ水を圧入し埋立層を流動化する場合の圧入水圧や流入量を、透水係数・孔隙率・水飽和率等のパラメータを数種類のケースで設定し、算出した。この検討では、石油生産に用いられるプログラムを改良して試みたが、廃棄物埋立層は不均質であることから十分といえる結果は得られていない。④については、昨年度と実験試料をかえて、重液選別・磁力選別・浮遊選別・それらの組合せによる選別を試みた。そして、メタルごとの濃縮率を算出し、各方法の有効性を検討した。⑤においては、各種選別結果に基づいて、品位率を計算した。都市鉱山として有望といえる濃縮ゾーンであるためには、品位率のほか、そのゾーンの規模が影響する。その規模を、IP探査プロファイルから推定する方法を検討中である。なお、③の地下からのメタル回収方法に関する現場実験が未着手であるが、これは今年度に実施予定である。 以上より、研究はおおむね順調に進展しているといえ、今年度末には「最終処分場鉱山学」としての体系を示せるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、2021年度が最終年度となる。前述したように、おおむね順調に進んでいるが、「地下からのメタル回収方法」に関する技法の現場適用実験がコロナ禍のために未だ着手できていない。コロナの状況次第であるが、2021年8月に現場実験を実施する予定で準備を進めている。実験対象とする最終処分場は、各種実験により埋立層内部状況が解明されているサイトを用いる。また、この実験による回収物について、物理的濃縮実験を行い、2020年度に提案した方法により都市鉱山としての評価を実施する。 以上の結果を総括し、「最終処分場都市鉱山の資源経済学的視点からの評価法の策定」および「鉱山学としての体系確立」を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
考案・設計したメタル採取法に関する現場実験を2020年度に実施予定であった。しかし、コロナ禍により、所属機関から出張規制がだされ、実験の時期を逃してしまった。この「次年度使用額」は全て現場実験の費用に充てる計画である。また、2021年度に交付される助成金は、現場実験の旅費・消耗品、および国内学会参加費用として使用することを考えている。
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