2023年5月に提出した「今後の研究の推進方策」での記載事項に即し、最終年度は1) 必要最少限の試料収集、2) 試料の処理・測定・解析、3) 研究成果報告書と投稿論文の原稿作成、関係学会での発表、および地元市民を対象とするアウトリーチ活動を行なった。1)に関し、前年度までの調査・解析や既存文献との照合などで疑問点が生じた部分に限って補完のための作業を実施した。この目的から、2)については状態が良好な(処理に要する時間と測定の労を最小に抑えることが可能な)試料を用いて所期の結果を得た。3)のうち、論文に関して英文1編と和文1編を学会誌へ投稿し、査読コメントに沿った修正稿の提出へ進んでいるが、いずれも査読者の回答待ち段階にあるため現時点で受理には至っていない。アウトリーチとしての公開講演会は2024年3月2日に釧路市立博物館講堂で実施し、新聞報道によると60名の参加があり、予定時間を超える質疑が行われた。このような経緯に照らすと、当初計画案に対する若干の遅れや想定外事案への対応はあるものの、概ね今後の研究の推進方策に沿った成果が得られた。単年度分に加えて前年度までの研究成果を総合すると、本研究の対象地域に分布する海成白亜系ー古第三系と陸成古第三系を構成する細粒砕屑岩には質量%オーダーに達する全炭素が胚胎されている。炭素の一部は無機態(炭酸塩)であるが多くは有機炭素として賦存する。これら有機炭素を燃料資源へ熟成を進める堆積盆熱履歴の地域的・層位的な偏りや実質的な被熱の時期が古第三紀以降の短期間であったため勇払油ガス田のような大規模鉱床の形成には至らなかったものの初年度(令和元年)に検討を加えた北海道太平洋沖に位置する日高トラフではガス・油兆が認められており、本研究が対象とする複数の地域および層準で道央の厚田・茨戸、道北の豊富などに匹敵するガス・油鉱床が伏在している可能性がある。
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