研究課題
2021年度は、振動を介した分子内エネルギー移動と化学反応の関連性について理論的考察を進めるために、(i)溶液中での自由エネルギー曲面の高精度計算を目指した手法開発とその応用、(ii)振動を介した分子内エネルギー移動を議論するための理論開発を行った。(i)では、統計力学と量子化学計算のハイブリッド法であるRISM-SCF-cSED法で定義した自由エネルギーの原子座標に関する2次微分を解析的に求めることに成功した。これにより、溶液内での構造揺らぎまで含めた自由エネルギー曲面を求めることが可能になった。本手法の妥当性を検討するために、パラニトロアニリン(PNA)の分子構造の平面性について検討を行ったところ、水中では分子振動を考慮することにより平面性が増すことを明らかにした。(ii)では、(i)で開発した手法により得られる振動モードに着目し、分子内でのエネルギー移動をこれら振動モード間のエネルギー移動で考察を学生とともに進めている。2021年度は数値的解法を用いることで、少数の振動モード間のエネルギー移動について検討を行った。研究期間全体を通じて、溶液内での高精度エネルギー計算、揺らぎを含めた自由エネルギー曲面の計算を行うための理論開発、ならびにそこから求めることができる振動モードを利用したエネルギー移動を議論するための手法の開発を行った。さらに、ここで得られた手法を利用し、溶液内での項間交差を介したエネルギー失活過程の考察、ヨウ素原子を含む多原子イオンの異性化反応などの応用研究も行った。理論開発に関しては、2報がThe Journal of Chemical Physicsにて掲載済み、1報が現在投稿準備中である。応用研究については、1報が投稿済、1報が投稿準備中である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
The Journal of Chemical Physics
巻: 155 ページ: 204102~204102
10.1063/5.0067248