研究課題/領域番号 |
19K05378
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
齋藤 大明 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (40506820)
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研究分担者 |
中尾 裕之 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (00805020)
森下 徹也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (10392672)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分子シミュレーション / 脂質フリップ / 自由エネルギー |
研究実績の概要 |
本申請研究では「リン脂質フリップを誘起する膜貫通ペプチドの計算分子設計」を行う.研究の目的は計算科学の方法(分子モデリング・分子動力学シミュレーション・自由エネルギー計算)を用いて,脂質フリップを誘起する膜貫通(TM)ペプチドの分子設計を行う.具体的には,1.長さや残基配列を変更したTMペプチドをリン脂質膜に挿入したMD計算を行い,膜内でのTMペプチドの分子配向やアミノ酸残基の構造や相互作用特性の観測を行う.また,2.高速・高精度の自由エネルギー計算法を開発し,モデルTMペプチド周辺の脂質フリップの起こりやすさを定量的に評価する計算技術を確立する.さらに,開発した自由エネルギー計算を用いて,3.TMペプチドの分子構成変化に対する脂質フリップ特性変化を評価し比較・検証する.これらMD計算で得られるペプチドの膜内構造や,脂質フリップ特性のデータはTMペプチドの分子設計のための指標データとなる.1-3の課題研究によって得られた計算データの集積・解析し,新たなTMペプチドの分子設計指針を与える.実際にモデイングしたTMペプチドの脂質フリップ能の評価・最適化を行い,4.新規TMペプチドの合成・評価の実験も行う.開発した計算手法,研究プロトコルは新規TMペプチドの合成や実験研究を加速させる基盤技術となると確信する. 当該年度は、テスト系としてPOPC脂質膜のMD計算を実施し、1つのPOPCが膜厚方向への変位に対する自由エネルギー曲線をLogMFD計算を用いて評価した。結果は計算コストを抑えつつ、既存の手法(アンブレラサンプリング法)と同程度の精度で自由エネルギー曲線を評価可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幾つかのテスト系における脂質フリップの自由エネルギー評価を行った。計算結果は国内外の学会で成果報告を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、「TMペプチドのMDシミュレーションと構造・相互作用解析」と「脂質フリップのための自由エネルギー計算手法の開発」のための検証研究を進めていく。さらに、今後は「TMペプチドの分子構成変化に対する脂質フリップ特性変化の検証」と「新規TMペプチドの設計・合成・評価」も行っていく予定である。これら研究によって得られた計算データの集積・解析によって,脂質フリップ促進ための新たなTMペプチドの分子設計指針を与える.
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次年度使用額が生じた理由 |
大型計算機の利用申請が認められ、これにより計算機購入の経費が節約されたため。
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