研究課題/領域番号 |
19K05379
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三輪 寛子 北海道大学, 触媒科学研究所, 助教 (90570911)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | リン化物 / 水素生成反応 / 表面 / Ni2P / DFT / STM |
研究実績の概要 |
2019年度は、Ni2P(10-10)面上に形成する1x1構造、c(2x2)構造、1x2構造上での水素生成反応(HER)活性を比較し、1x1構造上での活性が最も高いことを明らかとした。また、これらの表面はNi(111)-1x1構造より活性が高いことを確認した。通常、NiがHERの活性サイトと考えられるが、我々は、第一原理計算の結果から表面に露出したPが、より高い活性を示すものと考えている。しかし、3つの表面構造の活性の差は、表面のPの数と比例せず、またonset電圧の値もことなったことから、すべてのPの活性が同じではなく、その局所構造が活性の高さに重要であることが示唆された。そのため、上述した3つの表面構造のPの局所構造を原子レベルで厳密に明らかとするため、同表面の1x1構造、 c(2x2)構造、1x2構造の第一原理計算を用いた検討も開始した。本研究では、近年、高いHER活性を有することが報告され、貴金属の代替触媒としても期待されている金属―典型元素化合物のHER高活性要因を、原子レベルで表面構造を決定可能な単結晶を用いることで明らかとし、更に、より高活性な表面構造の構築を目的としており、その一例として、特に活性の高いNi2Pをターゲットとしている。手法としては、超高真空下での走査トンネル顕微鏡などの表面科学的手法とミュオンスピン回転法、第一原理計算を用いる。2019年度の結果から、HERに対する活性は表面構造に大きく依存することが示せたため、今後、1x1構造の活性要因をc(2x2)構造、1x2構造と比較しながら明らかとすることで、本研究の目的が達成できるものと考えられる。我々は、既に1x1構造、c(2x2)構造、1x2構造について走査トンネル顕微鏡画像から知見を得ており、更に2019年度着手した、第一原理計算から、より詳細な構造と電子状態について明らかとなると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、当初の予定通り、様々なNi2P表面構造上でのHER活性を比較することに成功した。具体的には、低速電子線回折パターンから1x1、 c(2x2)、1x2周期の表面構造が露出していることをそれぞれ確認した表面を用いた。表面に依存し活性が明らかに異なる結果が得られた。面方位は一定であるため、bulkの構造や電子状態は同じであると考えられるので、この結果は表面の局所構造の違いに由来するものと考えられる。これは、当初、我々が第一原理計算から予測していたことを、実験的に明らかとしたことを意味する。そのため、本研究は予定通り進んでいるもの考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、2019年度結果を元に、電気化学ミュオンスピン回転法やSTMを用いて、Ni2P表面構造上でのHER高活性要因を明らかとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で当初計上していた実験旅費、及び、学会参加旅費を使用しなかった。参加しなかった分は、2020年度参加する予定である。
|