研究課題
前年度までに、Ni2P上でのHER活性の表面構造依存性を見出し、表面上のP近傍の構造が活性の高さを決めていることを見出した。しかし、第一原理計算から予測していたNi2PのP終端表面でのPtより高いHER活性を見出すことはできなかった。この理由は、表面を終端しているPと水素原子との結合と比べ、同Pと表面第二層のNiとの結合が弱いため、水素生成よりPH3脱離が優先してしまうためだと考えた。そこで、本年度は表面を終端しているPに水素が吸着した状態での表面第二層のNiとの結合について調べるため重水素を使った昇温脱離法(超高真空下)の測定を行った。表面は我々が以前LEED-IV法により原子レベルでP終端表面構造を示した(0001)面を用いた。150 Kで重水素を吸着後、昇温しながら、脱離分子を四重極形質量分析計で追跡したところ、D2の脱離が300 K付近からみられるのに対し、PD3の脱離は、より低い200 K付近から始まることがわかった。つまり、HER反応に対してPt以上の高活性を示さなかった要因は、HER反応よりもPH3の脱離が優先されるためであると考えられる。PH3が脱離するとNi終端表面が露出するが、第一原理計算からもNi終端表面では高いHER活性は見込めないことが示されている。以上のように、第一原理計算でNi2P-P終端表面上のHの吸着エネルギーを計算し、HER反応のvolcano plotからPt以上の高い活性を予測した。前年度までに、表面構造を原子レベルで規定した単結晶を用いた実験からはHER活性の表面構造依存性を見いだし、それらはNi以上の活性を示すがPt以上の活性は示さなかった。その原因は、HER反応中に表面構造が変化してしまうためであると昇温脱離実験から結論した。
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J. Phys. Chem. C
巻: 126 ページ: 1006-1016
10.1021/acs.jpcc.1c08393