研究実績の概要 |
本研究課題の二年目であるR2年度は,R元年度に実験が終了していた40種の非芳香族イオン液体の低振動数スペクトルおよび液体物性の測定結果について,データ集的な論文にまとめ,発表することができた(Bull. Chem. Soc. Jpn. 2020, 93, 1520)。本研究課題の核心はこれで達成できたと思う。尚,この論文は優秀論文に選ばれた。 この非芳香族イオン液体の研究に加え,当研究室で開発した硫黄を含む新規ホスホニウム型イオン液体および硫黄の代わりにメチレンと酸素を含むイオン液体について,フェムト秒ラマン誘起カー効果分光(fs-RIKES)で低振動数スペクトルの測定を行った。また,神戸大学富永教授のグループにおいてテラヘルツ時間領域分光(THz-TDS)による測定も行った。スペクトルのピークは両者でかなり大きく異なる(約50 cm-1)ことが明らかになった。 また,イオン液体と分子液体(アセトニトリル,メタノール,ジメチルスルホキシド)の混合系についての研究も行った。Fs-RIKESで測定したスペクトルの解釈について,佐賀大学高椋教授のグループが行った分子動力学シミュレーションの結果と比較を行い,分子液体の性質との関係について共同して考察した(J. Phys. Chem. B 2020, 124, 7857)。この論文はsupplementary cover artに選ばれた。 その他にも,イオン液体の低振動数スペクトルの温度依存性について,書籍の1章に総説として発表することができた(Theoretical and Computational Approaches to Predicting Ionic Liquid Properties, Elsevier, 2020, Chapter 5)。
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