本研究では、これまで開発してきた自動探索スキームを基盤に、特定の物性を示す分子を自動探索可能なプラットフォームを開発する。さらに、次世代太陽電池材料である有機薄膜太陽電池に適用し、新材料を提案する。 本年度も、引き続き強化学習を用いた分子生成アルゴリズムを用いて、光電変換効率が20%近くを示す有機薄膜太陽電池の非フラーレンアクセプター(NFA)に関して検討することにした。具体的には、ドナー分子はPM6ポリマーとし、アクセプター分子は、高い光電変換効率を示すことで知られているY6をベースに部分構造の最適化を行った。本アプローチで採用した光電変換効率の見積りに対して数値検証したところ、短絡電流を過少評価する傾向がわかった。一方で、分子探索の観点では大きな影響がないことを確認したが、将来的には改良を考えていきたい。ドナー・アクセプター型のNFAが満たすべき条件として、1)バンドギャップ・軌道エネルギー、2)かさ高い側鎖、3)結晶性などが挙げられるが、特に。1)に関して検討した。現在候補分子として、共役系が伸長した骨格分子などが生成され、妥当な結果を得ることができた。一方、分子の対称性は失われており合成の観点からは考慮の余地を残した。 以上の検討から、ドナー・アクセプター型の有機薄膜太陽電池に適用できる分子探索プラットフォームを開発した。今回は、特定のドナー・アクセプターの組み合わせを検討したが、その他の分子の組み合わせにも容易に拡張可能であり、引き続き有機薄膜太陽電池候補分子の探索を続けていきたい。
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