電子供与性分子(ドナー)と電子受容性分子(アクセプター)結晶を貼り合わせるように接触させると,お互いが真性半導体であるにも関わらずその接触界面の電気伝導性は向上する。これは,これまでの界面にて相互の電荷の移動が生じ,界面分子の電子構造が開殻化した為であることが,これまでの我々の電子スピン共鳴を用いた研究によって確かめられている。このことからドナー/アクセプター分子接触界面で,機能の源となる不対電子やスピンが生じており,この分子を接触させるという単純かつ安価な方法で,様々な機能を発現させることができることを示唆している。この現象は,現在世界中で精力的に行われている軽量で折り曲げ可能な分子性の材料を用いた低コストデバイス開発を実現する一つの手法として利用できるの可能性があり,例えば原油からの廃棄物などで材料開発が行えれば,極めて低コストのデバイス開発が可能になる。本研究では,分子固体の接触界面で乗じる電荷移動現象を理解し,機能を探索する研究を行っている。 (1)ポルフィリン系化合物/F2TCNQ界面で生じる電荷移動 前年度に学術論文としてCrystEngComm誌に掲載されたポルフィリン系化合物とTCNQ誘導体の接触界面で生じる電荷移動現象を薄膜化した試料においても実現可能かを確かめた。 (2)安価な分子同士界面で生じる高電導性 引き続き1000円/gの安価な物質を対象として,接触界面が高電導化する物質探索を行った。その結果,フタロシアニン系化合物とベンゾキノン系化合物の組み合わせがデバイスとしてより汎用的な形状である薄膜状態でも高電導性を示した。
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