研究課題/領域番号 |
19K05398
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
和田 裕之 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (00422527)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レーザー / ナノ粒子 / 近赤外光 |
研究実績の概要 |
2019年度には、塩化アルミニウムフタロシアニン、および、シリコンナフタロシアニンのナノ粒子を作製し、その特性を調べた。 塩化アルミニウムフタロシアニンは、照射するレーザーのエネルギー密度(フルエンス)を増加させると、ミクロンサイズの柱状原料がナノ粒子に微細化することが分かった。凝集体の2次粒径もフルエンスの増加と共に80 nm以下まで微細化し、生体利用が可能であることが分かった。また、フタロシアニンの吸スペクトルにおけるQ帯のDavydov分裂による2つのピークの比からα型-β型間の結晶構造変化が示唆された。フルエンスの増加と共に吸光度も増加し、この主な理由はナノ粒子化による比表面積の増加であることが示唆された。ナノ粒子水溶液は、塩化アルミニウムフタロシアニンが疎水性であるにもかかわらず、吸光度の変化が80日以上ほとんど観察されないという高い分散安定が示された。これは、ナノ粒子表面の構造が関連していると考えられ、現在、詳細な評価を行っている。原料からナノ粒子に変換される効率は、一般に、数%程度のものが多いが、フルエンスの増加と共に92 %以上まで増加した。 シリコンナフタロシアニンにおいてもフルエンスの増加により2粒径を100 nm以下まで微細化させることができることが分かった。フルエンスの増加と共に吸光度が増加し、Q帯における2つのピークの比が変化したことから結晶構造の変化が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終的な目標である「界面活性剤を含まないナフタロシアニンナノ粒子の作製と光音響イメージングへの応用」に向けて重要な疎水性ナノ粒子の水溶液中での分散安定性において、80日以上吸光度が低下しないことが分かった。これはナノ粒子の表面状態が大きく関連していると思われ、引き続き改善と評価を行っていく。また、生体適合性があり、近赤外光の吸光度が高いフタロシアニン・ナフタロシアニン系ナノ粒子の作製と評価を行ってきて、多くの知見が得られた。生体利用の観点から、2次粒径が、肝臓のクッパ細胞への貪食がおこらない数百nm以下で、腎臓から尿としての排出が起こらない数十nm以上のものができたことは重要である。吸収スペクトルにおいては、生体の窓の領域にピークをもつナノ粒子を作製できたので、光音響イメージングにつなげることができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き、近赤外光吸収ナノ粒子の作製を行い、特性評価を行っていく。ナノ粒子分散性に関する表面特性の評価はFT-IR等により表面官能基の変化等を調べていく。近赤外光の吸収特性の向上に関してはフタロシアニン・ナフタロシアニンにおける中心金属を変化させて作製と評価を行う。光音響イメージングに関しては、上記で最適と考えられるいくつかのナノ粒子に関して、培養細胞によるin vitro実験を行い、その後、マウスを用いたin vivo実験を早急に行う予定である。この際、低濃度のナノ粒子による高感度イメージングが重要であり、少しでも吸光度を増加させることができる方法を検討する。ただし、2020年度は新型コロナウィルスの影響で実験が開始できていないため、何らかの方法を早急に考えて対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進み、予想より研究費が少なくて済んだため。また、併せて、新型コロナウィルスの影響で年度末の出張等が少なくなったため。これらは、来年度に開催される国際会議ICALEO等の参加費とすると共に、さらなる実験を進めるための試薬購入費とする。
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