2022年度には、ナフタロシアニンと同系列で様々な特性が既に多く調べられているフタロシアニンに関して、中心金属がマンガンであるものの研究を主に行った。 マンガンフタロシアニンに対して、超純水中でレーザーフルエンスを振って532 nmのレーザー光を照射すると、走査電子顕微鏡観察により、微細化が進行し、ミクロンサイズの原料から1次粒径が数10 nm程度の微細ナノ粒子と数100 nmの球状ナノ粒子が同時に作製できることが分かった。この傾向はフルエンスを75~300 mJ/cm2で振っても大きくは変わらなかった。2次粒径に関しては、動的散乱法により、フルエンスの増加と共に150 nm程度まで減少していくことが分かった。この粒径は、生体利用を考えると血管内滞留効果やがん細胞蓄積効果の観点から最適であると考えられる。 作製したナノ粒子分散水溶液の吸収スペクトルのピークはフルエンスの増加と共に増加し、更に増加させると減少した。増加はナノ粒子生成量の増加に起因し、減少はナノ粒子生成量の増加によりナノ粒子の凝集と沈降が促進されたためと思われる。吸収スペクトルの形状では、ソーレー帯とQ帯のダビドフ分裂に関して、フルエンスを増加させると、α型の結晶を示す短波長側のピークの割合が、β型を示す長波長側のピークの割合に比べて減少していることから、結晶がα型からβ型に変化したと思われる。 ナノ粒子分散水溶液において、吸収スペクトルを用いて分散安定性を評価したところ、150 mJ/cm2のレーザーフルエンスにおいて最も安定な傾向が得られた。ナノ粒子のゼータ電位を測定したところ、このレーザーフルエンスにおいて最も高い絶対値を得ることができ、静電反発により分散安定性が高くなったことが分かった。
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