研究課題/領域番号 |
19K05399
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
三浦 智明 新潟大学, 自然科学系, 助教 (80582204)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 時間分解分光 / 過渡光電流 / 電荷移動度 |
研究実績の概要 |
軽量、低コスト、低環境負荷といった優れた利点を持つ次世代太陽電池として注目されている「有機薄膜太陽電池」は光を電気エネルギーへ変換する効率が低いことが問題となっている。光で生成した電荷の損失過程を明らかにするために、電荷の数を計測する分光測定と、電荷の流れを計測する電流測定を同一の太陽電池素子を用いて行う手法を新たに開発した。 太陽電池素子は透明電極と不透明金属電極の間に有機薄膜がはさまれた構造を有しているため、光は透過しない。そこで、半導体レーザーをプローブ光源として用いる反射型吸収分光装置を開発した。透明電極側から532 nmのパルスレーザーを照射し有機薄膜内に生成した電子および正孔による吸収信号を観測するため、透明電極側から有機薄膜に入射した近赤外プローブ光を金属電極で反射させ、フォトダイオードにより時間分解観測した。これとシャント抵抗を用いた光電流測定を同時に行った。代表的なポリチオフェン:フラーレンバルクヘテロ型太陽電池素子(変換効率1%程度)を用いて測定を行い、光生成電荷による分光・電気伝導信号の同時時間分解観測に初めて成功した。 短絡条件および逆バイアス条件で、光電荷の電極収集による信号の急激な減少が観測された。このような電極収集を分光観測した例はこれまでに報告されておらず、新たな電荷移動度測定手法として期待できる。両信号に対する収集時間から得られる移動度、および光電流を過渡吸収信号で割り算することによって得られる移動度の時間変化を比較し、電荷動力学に対する多角的評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた測定装置開発に成功し、実際の太陽電池素子を用いた測定から多角的かつ定量的に移動度を評価し、電荷動力学に関する考察を行うことができたため、計画通り順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
多角的な電荷移動度評価から見えてきた様々な移動度を持つ電荷についてより詳細な検討を行うため、電場をパルス変調した測定により、トラップ電荷を定量的に評価する手法を開発する。また、温度依存性測定を行うために、温調装置に入る小さな太陽電池素子を作製し、測定を行う。 これと並行し、 電荷の電極収集・再結合・トラップ過程を取り入れたシミュレーションを開発し、実験データの解析を行う。ここから電荷動力学をより定量的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
別予算にて旅費等への支出を行う事ができたため、残予算が発生した。残額と翌年度予算を合わせて電場変調・温度可変測定に向けた装置導入等を行う。
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