研究課題/領域番号 |
19K05399
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
三浦 智明 新潟大学, 自然科学系, 助教 (80582204)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 時間分解分光 / 過渡光電流 / キャリア移動度 |
研究実績の概要 |
標準的なP3HT:PCBMバルクヘテロ薄膜を用いた有機薄膜太陽電池素子について、光生成電荷キャリアの消滅過程を詳細に解析した。開発した過渡光吸収-過渡光電流同時計測によって得られる電流信号と分光信号の除算から平均キャリア移動度の時間変化が得られた。ここで求まる平均移動度に加え、電極取り出し時間から求まる従来型のTOF移動度を同一素子・同一条件で得ることに成功した。2つの方法で得られた移動度の温度依存性の比較から、TOF移動度は活性化エネルギーが小さく、移動準位近辺のキャリアを選択的に評価しているのに対し、トラップキャリアも含めた全平均移動度は顕著に大きな活性化エネルギーを示し、深いトラップに捕捉されたキャリアが薄膜中に多数存在していることが明らかになった。このことは従来の電気的移動度計測法では、非常にマイナーな高移動性キャリアを選択的に評価してしまう危険性があり、電流にほとんど寄与しないトラップキャリアの寄与を正しく評価できないことを如実に示している。本手法は有機薄膜太陽電池素子中に存在する、移動度分布をもったキャリアの全体像を実時間的に評価できる有用な手法である。 また、過渡光吸収、過渡光電流の時間変化がべき乗測に従って減衰することに着目し、共同研究にて理論計算との比較を行った。キャリア再結合の寄与は無視した計算ではあるが、今回観測された時間変化は従来のホッピング理論でおおむね説明できることがあきらかとなった。 これと並行し、発光性サンプルの測定にも対応できるように、過渡吸収信号から発光信号を差し引く測定プログラム改良を行い、色素ドープ導電性薄膜素子において10 nsスケールの再結合過程に対する磁場効果の観測に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽電池素子の歩留まりの悪さから、予定していた電場変調測定は行えなかったが、温度依存性測定から興味深い成果が得られたので、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
太陽電池素子作製の歩留まり改善に向けて作製条件を再検討するとともに、予定していた電場変調測定を行う。これによりトラップキャリアの動力学に関してより詳細な検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加の測定を行う。
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