研究課題/領域番号 |
19K05409
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
林 久史 日本女子大学, 理学部, 教授 (60250833)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プルシアンブルー類似体 / リーゼガングバンド / 徐放性製剤 / Cs吸着剤 / in situ 高分解能・蛍光X線分光 / XANES / 局所構造 |
研究実績の概要 |
本年度は、交付申請書に記載した3つの目的、(1)「経口投与可能なゲル中にプルシアンブルー(PB)、もしくはプルシアンブルー類似体(PBA)のリーゼガングバンドを形成させ、その最適な調製条件を見いだすこと」と、(2)「最適条件で調製したゲル試料内の、PBあるいはPBAの濃度分布と局所構造を調べること」、(3)「状態が明かになったゲル試料におけるCs吸着能の強さと、Csの吸着状態を調べること」のすべてを、MnとFeからなるPBA(Mn-Fe PBA)について現有の装置を用いて達成し、学会発表だけでなく、論文発表までこぎつけた。少なくともMn-Fe PBA系については、基本的な地ならしは本年度で終えたと考えている。 これに加えて、ゲル試料の調製条件を様々に変えたときのPBやPBAのX線分析に必要不可欠な、「低コストで壊れにくい、プラスチックストローを利用した試料セル(ストローセル)」の開発にも成功し、論文発表した。 上記の達成とあわせて、本研究でもっとも困難と思われた、「実験室での高分解能・蛍光X線分光器」の開発も順調にすすみ、標準試料の測定といくつかの予備的な測定を終えた。ここまでの予備的な測定からも、これまで報告されていない、分析化学的に興味ある結果が得られたので、現在、論文にまとめている最中である。 今後は、本年度の成果を基盤にして、外場の効果を導入したり、Mn-Fe PBA以外のPBAに対象を拡大するなどして、PB/PBAゲル試料の薬剤としての有用性を高め、最終目的である「自発的に形成された沈殿帯パターンを徐放性製剤に役立てること」にさらに近づいていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Mn-Fe PBAという特定の系のみについてではあるが、交付申請書に記載した目的を全て達成し、論文発表までこぎつけたただけでなく、本研究の審査期間中に、「ストローセルの開発」という、予定外の成果もあげられたから。加えて、難関と思われた「実験室での高分解能・蛍光X線分光器」の開発も順調にすすみ、ハードウェアがほぼ完成しただけでなく、標準物質の測定にまで至ったから。
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今後の研究の推進方策 |
3点考えている。(1) 本年度、一定の成果をあげられたMn-Fe PBA系について、電場など、外場の導入によって、さらに徐放性薬剤に適したパターニングが実現するか、検討したい。(2) Mn-Fe PBA以外のPBAに研究対象を拡張したい。(3) (2)に応じて、Coなど、Mn以外の蛍光X線を高分解能分光できるよう、蛍光X線分光器をさらに改良したい。これらを並行して実施することで、「自発的に形成された沈殿帯パターンを徐放性製剤に役立てること」という最終目標にさらに近づいていきたい。
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