研究実績の概要 |
本研究では炭素材料のモデル物質であるグラフェンに対して,有機化学的手法による液相酸化による酸素導入,半導体工学的手法であるイオンビーム注入による窒素,ホウ素導入を実施して化学修飾によるトポロジーを変調することを試み,構造,電子物性への影響について評価を行うことにより,新規炭素材料開発の指針を得ることを目指した. 1)犠牲層としてNaClを用いた窒素,ホウ素ビーム照射により,2次元物質であるグラフェンへ欠陥の導入を最小限に抑えながらヘテロ元素導入を行った.電界効果トラジスタデバイス構造を利用した電気伝導度測定により,窒素,ホウ素がそれぞれ電子,ホールドープを起こすと同時にそれぞれ荷電散乱源,中性散乱源として働くことが明らかになった. 2)グラフェンをそれぞれKMnO4, KClO3を用いて液相酸化してグラフェンに酸素が共有結合的に導入された酸化グラフェン(GO)を得た.XRD,XPS,IRの測定により同じ組成比で酸素が導入されたGOにおいて存在する酸素含有官能基が異なることは示唆されていたが,超高温域までの昇温脱離測定を行うことにより,明らかに異なる化学構造で酸素が導入されていることがわかった.これらの結果のうちいくつかはすでに学術誌にて公表され,残りは投稿準備中である.
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