四級オニウム塩をゲスト、水分子からなるケージをホストとする準包接水和物は、ケージ中にガス分子を包蔵することができるため、新たなガス貯蔵/運搬材料として注目されている。四級オニウム塩の対アニオンは包接されておらず、ケージの構成部位として含まれるか、或いは近傍にて移動できる状態となっているのでイオン伝導体となる可能性があるが、その詳細な挙動は十分に調査されていない。そこで申請者は、ガス分子の包蔵の有無が準包接水和物のイオン伝導性に大きく影響を及ぼす可能性があると考え、これを交流インピーダンス法で電気的信号として検知してガスセンサーへの応用にチャレンジすることとした。 2023年度は、本来は3か年での期間であった本研究計画を延長した5年目となった。前年度までに、単結晶性の高い準包接水和物の交流インピーダンス測定による解析を行ったところ、イオン伝導の可動イオンとしてプロトン(H+またはH3O+)の可能性が高いことがわかってきた。さらに、不飽和結合や環状構造を導入した非対称型四級ホスホニウム塩を設計して合成し、新たなゲスト物質系を確立した。これらの置換型ホスホニウム塩による準包接水和物系は画期的なものであったが、非対称構造ゆえにやや低い平衡温度を示す傾向が見られた。加えて、これまではゲスト物質のアニオンが臭化物イオンに限定されていたところ、他のハロゲン化物イオン(塩化物イオンおよびフッ化物イオン)や水酸化物イオンについても拡張して交流インピーダンス測定による解析を行った。これらのゲスト物質の中では水酸化物が最も高い電気伝導性を示し、最も陰性の高いフッ化物について最も低い電気伝導性を示すことが分かった。
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