研究課題/領域番号 |
19K05413
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研究機関 | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
研究代表者 |
岩瀬 裕希 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 副主任研究員 (70391266)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中性子小角散乱 / レオロジー / ずり粘稠 / 紐状ミセル / カチオン性界面活性剤 |
研究実績の概要 |
イオン性界面活性剤水溶液に塩を加え、ずり流動を印加すると特異な粘性挙動を示す。塩の添加によってミセルは球状から紐状に変化し、流動の印加によりさらに構造変化することや、シアバンドと呼ばれる界面活性剤リッチなマクロな相が形成される。しかし、これらの構造変化とずり粘稠挙動の関係は明らかとなっていない。本研究では、これまで整備を進めてきたレオロジーと中性子小角散乱の同時測定(Rheo-SANS)に加え、新たにシア中性子小角散乱(Shear-SANS)も実現することで、ずり流動印加による微視的なミセルの構造変化と巨視的なシアバンド形成の同時測定を行い、ずり粘稠などの特異なレオロジーの発現機構を解析することを目指している。その実現に向けて、2019年度は、最初にシアセルの新規設計に取り組んだ。界面活性剤水溶液だけに留まらず、粘土懸濁液や高分子溶液などにも応用できるように当初の仕様(最大回転数)を倍に変更した。そのために再設計を行う必要が生じたが、概ねシアセルの設計を完了した。また、イオン性界面活性剤水溶液(単鎖型、ジェミニ型、および三鎖型)について、塩の添加による影響をレオロジー測定、SANS測定、およびRheo-SANS測定を用いて系統的に調べた。これによりShear-SANSでの実験条件は決定した。また、Rheo-SANSによる紐状ミセルのレオロジー挙動に関する研究成果を「Okinawa Colloids 2019」など3件の国際会議、および1件の国内の研究会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、2019年度中にシアセルの設計・製作を終了する予定であったが、途中で仕様変更したため、製作が2020年度に持ち越された。しかし、測定対象の3種類のカチオン性界面活性剤(単鎖型、ジェミニ型、および三鎖型)が水溶液で形成するミセル構造に対する塩の効果を、当初の計画以上に詳細に調べることができた。さらに2020年計画のShear-SANS実験を実施する目処が立ったので、遅れを取り戻すことができる。
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今後の研究の推進方策 |
最初にシアセルを完成させる。それを用いて、J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)の中性子小角・広角散乱装置(TAIKAN)において、サルチル酸ナトリウムを含むカチオン性界面活性剤水溶液(単鎖型およびジェミニ型)について、Shear-SANS測定をRheo-SANS実験とともに実施する。さらに、Shear-SANS測定の応用可能な現象について探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の大部分の予算はシアセルの製作費用である。当初の仕様(最大回転数)を変更した関係で、製作が完了が2020年度になってしまったため、その予算を2020年度に持ち越した。
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