研究実績の概要 |
本研究では、有限個のナノサイズ3次元空孔からなる集合体の構造一義的構築と応用を目指す。 有機配位子(L)と金属イオン(M)のなす金属配位を駆動力とした自己集合を制御することで、複数のナノ空孔を集積したオリゴマーを合成することを概念設計の出発点とし、これまで広く研究されているホストーゲスト間の相互作用に基づいたしくみからさらに一歩踏み込んだ、異種3次元空孔間における“ホストーホスト”コミュニケーションの発現機構を開発することを目標としている。今年度は、昨年度得られた(M3L2)n多面体錯体(n=2,4,6, M = Cu(I), Ag (I))のさらなる概念拡張と応用に向けた検討を行った。(1) (M3L2)n錯体の構造解析より、M3L2サブユニットの安定性が包接アニオンに大きく影響を受けていることが示唆された。この知見をもとにして、一度形成した(M3L2)2空孔錯体を前駆体として対アニオンの交換を行うことで、集積するサブユニットの数を2から8に拡張させることに成功した。得られた(M3L2)8錯体はアニオンを包接する8つの小空間と中心の直径1 nmに及ぶ大空間の複数の内部空間が集積した一義構造をとることが、放射光X線構造解析により明らかとなった。(2) (M3L2)n錯体の自己集合条件を変化させることで、これまで得られていた多面体構造にさらに金属イオンが挿入することで変形し、内部空孔と外部湾曲型ポケットを併せもつナノ空孔錯体が構築されることを明らかとした。以上、いずれの結果も、本研究において切り拓こうとする異種3次元空孔間の化学にとって望ましい構造特性をもつナノ空間を与えるものである。
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