現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は新型コロナウィルス感染症に対する予防処置の為、春学期は殆ど研究が停滞していた。しかし、秋以降の努力により新たに国際論文誌に2報の論文を掲載することができた。①の研究テーマ「ヘテロ芳香環を含む巨大環状共役系の合成とその機能に関する研究」では、 (a) フェニル環などの嵩高い置換基の導入によって色調の変化を伴うポリモルフィズムを起こす分子に関してそのナノ集積体の新機能について調査し、ファイバー化したナノ集積体がベイポクロミズム挙動を伴って大きく形状変化すことを見出報告した(J. Am. Chem. Soc., 2020, 142(32), 13662 -13666に掲載)。(b)高いHOMOを持ちかつ安定な酸化種を形成する巨大環状共役系分子を構築にチャレンジして、三次元にπ共役系が拡張した70π電子芳香族性に関する新たな知見を得ることが出来たことを報告した(J. Am. Chem. Soc., 2020, 142(13), 5933 -5937に掲載)。また、(c)新規π拡張大環状オリゴチオフェンの改良合成法、構造解析、光学特性、およびOFET特性について報告した(J. Org. Chem., 2021, 86(1),302-309に掲載)。 ②の研究テーマ「剛直な三次元構造を有する新規π拡張環状共役系分子の合成とその機能に関する研究」の一つの標的分子であるトロポノイドの錯形成挙動を活用した幾つかの2核環状錯体(Cu2+、Ni2+,あるいはPd2+)を合成し、それらの錯体の構造や光学特性について検討した。また、標的のCu2+イオン錯体においてπ系を介した弱い銅(Ⅱ)-銅(Ⅱ)間のスピン相互作用に関する知見がえられた。現在比較単核錯体の物性を調査しており、その結果と併せて投稿準備中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の当初予算で見積もっていた物品費および旅費において、「新型コロナウィルス感染予防対策」の対応により、春学期の間殆ど研究実験を実施することができなかった。併せて、参加した学会が全て「新型コロナウィルス感染予防対策」の観点からオンライン開催となり旅費を使用することができなかった。しかしながら、秋学期以降では研究実験を再開することができた。その際、旧式の実験機器類(マグネチックスターラーやダイヤフラムポンプなど)が故障したため、それらを更新する為に購入した。しかしながら、物品費の内、本研究の主要な合成実験において、試薬や有機溶媒などの合成実験に欠かすことのできない消耗品の購入実績が年間を通じて低下した。以上の理由により、2020年度の予算の\123,978が未使用となり2021年度の使用となることとなった。 2021年度については、この\123,978は物品費として消耗品(試薬あるいは有機溶媒)の購入に活用する計画である。今年度も社会情勢の変化によっては、学生の登校制限という予期せぬ事態が生じことも懸念されるが、計画年度として本研究を完成するよう努力する所存である。
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