研究課題/領域番号 |
19K05422
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
宇野 英満 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20168735)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | (R)-(-)-α-フェランドレン / 光学活性ピロール / 光学活性BODIPY / 光学活性ポルフィリン / 逆Diels-Alder反応 |
研究実績の概要 |
以下の3つのプロジェクトを並行して行った。 ①市販のテルペン系香料(R)-(-)-α-フェランドレンから誘導した不斉炭素を有するビシクロ[2.2.2]オクタジエン縮環芳香族化合物を基にして,フェランドレン由来の炭素不斉とπ電子系由来のねじれ不斉を有する色素分子の合成を目指した。この化合物は、逆Diels-Alder反応によりフェランドレン由来の不斉を消滅させることで,π電子系の拡張とともにねじれ不斉π電子系だけを有する分子を与え,強い円偏光発光(CPL)が期待できるうえに,分子の形状による分子集積の制御も期待でき,円偏光発光有機半導体となることが期待される。(R)-(-)-α-フェランドレンとcis-ビススルホニルエチレンのDiels-Alder反応ののちイソシアノ酢酸エステルとの反応により2種のジアステレオマーを収率よく得ることができた。この2種のジアステレオマーは分別再結晶により、容易に分離することができた。得られた光学的にも異性体的にも純粋な3環性ピロールカルボン酸エチルエステルを用いて光学的に純粋なボロンジピロメタン(BODIPY)及びポルフィリン色素とすることができた。合成されたこれらの色素にはねじれ不斉がまだ導入されていないが、BODIPYのO-キレート化及びポルフィリンの軸配位子の導入により、ねじれ不斉の導入を目指している。 ②テトラベンゾポルフィリンのぺリ位に電子豊富な芳香族置換基を導入し、酸化反応により高度にねじれたポルフィリンπ電子系の構築に成功した。 ③ヘキサピロロヘキサアザコロネン合成の時に生成する部分開環体をジホルミル化することによりにより、ねじれの固定化を目指したところ、予想に反して閉環が起こったのちに脱離反応が進行して反芳香族カチオン体が生成することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した3つのプロジェクトともに成果をあげることができ、その成果を論文や学会発表の形で公表することができた。 ①では目的の光学的にも異性体的にも純粋な3環性ピロールカルボン酸エチルエステルを得ることに成功し、これを用いてBODIPY及びポルフィリン色素の合成にも成功した。この成果の一部は、第46回有機典型元素化学討論会でポスター発表することができた。 ②ではプロペラ型にねじれたラセミのフリーベースポルフィリンの合成に成功した。このポルフィリン合成において、光学的にも異性体的にも純粋なピロールカルボン酸エステルを用いれば、光学活性なねじれ不斉を有するポルフィリンを得ることができる。 ③では目的のねじれ不斉の合成には成功しなかったが、新たな反芳香族化合物を創出することができ、学会及び論文として成果を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に着手した3つのプロジェクトをさらに進展させる。具体的には以下の検討を行う。 ①光学的にも異性体的にも純粋な3環性ピロールカルボン酸エチルエステルを得ることに成功しているが、このピロールのかさ高い置換基を有する誘導体を合成し、これを用いてBODIPY及びポルフィリン色素の合成を行う。このことにより、逆Diels-Alder反応を起こしたのちにねじれ不斉が安定に存在するBODIPY及びポルフィリンの合成を行う。 ②では不斉ポルフィリンに軸配位子を有する金属を導入する反応を検討する。軸配位子を有するポルフィリンが合成出来たら、逆Diels-Alder反応を用いることで、不斉なテトラベンゾポルフィリンの合成を目指す。 ③では、3環性ピロールを用いてオクタピロリルナフタレン及びデカピロリルアントラセンを経てフェランドレンの不斉とねじれ不斉を有するオリゴアザナノグラフェンを合成し、ねじれの反転挙動を解析する。 初年度は行わなかった光学活性トロイダル共役化合物の合成と光物性についても着手し、ペリレンテトラカルボン酸無水物と(R)-フェネチルアミンより合成される既知のペリレンビスカルボジイミドを用いて、ピロール環を構築することで、ペリレンビスジイミド縮環ピロールを構成する。これとヘキサフルオロベンゼンとの反応により、6枚の光学活性ペリレンビスカルボジイミド縮環ピロールがベンゼン環周辺に円形に配された化合物の合成を目指す。この化合物のトロイダル共役性と不斉との関係性を検討する。
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