研究実績の概要 |
(R)-(-)-α-フェランドレンから誘導した光学活性ピロール-1-カルボン酸エステルの分離を引き続き検討した。アリル位のメチル基をヒドロキシメチル基及びホルミル基に変換することに成功したが、いずれの場合もカラムクロマトグラフィーによる分離は効率が改善しなかった。そこで分別再結晶の効率向上に再度取り組んだ。(R)-(-)-α-フェランドレンとcis-1,2-ビスフェニルスルホニルエチレンとのDiels-Alder反応により得られる1,2-ビスフェニルスルホンの改良Barton-Zard法による光学活性ピロール-1-カルボン酸エステル合成において、弱い塩基を用いることで、選択性が改善することが分かった。これにより、分別再結晶の効率が格段に改善された。これを用いて、光学活性ポルフィリン及びBODIPYの合成に成功した。 橋頭位に電子豊富なアリール基を有するビシクロ[2.2.2]オクタジエン縮環ピロールの四量環化によるポルフィリン合成では橋頭位アリール基の立体障害により、同一の方向にアリール基が配され、これの逆Diels-Alder反応により4重にねじれた構造を有するテトラベンゾポルフィリンの合成を報告した。さらに酸化することにより、メソ位とアリール基の間で結合が生成し、テトラフェナントリノポルフィリンが得られた。この化合物のX線結晶構造解析にも成功し、ポルフィリン環がプロペラ型ではなくサドル型に大きくねじれていることを見出した。この成果は論文として発表した。 光学活性をもつカルバゾール類縁体とヘキサフルオロベンゼンとのSNAr反応により、6つの色素ブレードを有する化合物の合成を行った。円環状に配置されたブレード間の相互作用により、新たな吸収帯とそれに対応するCPL及び温度依存性のCDを観測することに成功した。
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