研究課題/領域番号 |
19K05423
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
北村 二雄 佐賀大学, 理工学部, 客員研究員 (00153122)
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研究分担者 |
小山田 重蔵 佐賀大学, 理工学部, 助教 (60525393)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フッ素化反応 / 超原子価ヨウ素 / 求電子的フッ素化 / 触媒的フッ素化 / 含フッ素有機化合物 |
研究実績の概要 |
超原子価ヨウ素の利用により、HF反応剤による種々のフッ素化反応を開発し、有用な含フッ素化合物の合成法を提供し、社会に貢献することを目的としている。本研究では、(1) 医薬品への応用を目指した含フッ素化合物の合成法の開発:(1-1) 生物活性な含フッ素オキサジン誘導体合成法の開発、及び(1-2) ペプチドミミックとして有用なβ-フッ化ビニル化剤の合成、(2) 高効率触媒的フッ素化反応のための新規高活性触媒の創製とフッ素化への応用を行い、医薬品として有用な含フッ素化合物の合成と高効率新規触媒の創製により、新規フッ素化反応を確立する。 今年度の研究実績は以下の通りである。 (1)PhIO/HF反応剤によるフッ素化反応について、新たにフッ素源の検討を行った。これまで、フッ酸、HF・ピリジン錯体、HF・アミン錯体を用いていたが、HF・THF錯体をフッ素源に用いるフッ素化反応を検討した。HF・THF錯体を用いるメリットはアミン錯体と異なり塩基性が低いため無水のフッ化水素に近いことである。カルボニル化合物のフッ素化には優れた効果は認められなかったが、芳香族アルケン等の求電子性の高い基質に対しては優れた効果が得られることがわかった。 (2)ペプチドミミックとして有用なβ-フッ化ビニル化剤の合成では、昨年に引き続き、o-ヨード安息香酸を用いることにより、環状のフッ化ビニルヨードニウム塩の合成を行った。この環状ヨードニウム塩は非環状の対象化合物と比べて優れた熱安定性があることが判明した。さらに、得られた環状ヨードニウム塩と末端アルキンとの薗頭-萩原カップリング反応を行い、この環状ヨードニウム塩は優れたフッ化ビニル化剤として有用であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画である(1) 医薬品への応用を目指した含フッ素化合物の合成法の開発として、 今年度は、(1-2) ペプチドミミックとして有用なβ-フッ化ビニル化剤の合成について重点的に研究を行った。その結果、安定な環状フッ化ビニルヨードニウム塩の合成法を確立し、優れた反応剤であることを明らかにした。この成果は論文(Arkivoc, part iv, pp. 25-34, 2020)に発表した。 また、新規にフッ素化反応のフッ素源について検討し、HF・THF錯体が芳香族アルケンのフッ素化反応に有用であることを明らかにした。この成果は論文(J. Fluorine Chem., Vol. 240, pp. 109670-109674, 2020)に発表した。 以上のように、コロナ禍において学会発動が制限され十分な研究活動ができたとは言えないが、上記に挙げたような優れた成果を挙げることができたため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度なので、本研究の成果の取りまとめを行う。 特に、「高効率触媒的フッ素化反応のための新規高活性触媒の創製とフッ素化への応用」について、研究を進める。新しい触媒系の創製のため、触媒系を再検討し、優れた触媒系構築のための指針が得られるように種々反応系を再検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)コロナ禍において国内学会や国際会議が中止となり、学会活動のための旅費が使用されなかった。
(使用計画)次年度は、予定通りに使用する。さらに優れた成果を得るため、研究補助としての謝金として使用する。
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