研究実績の概要 |
本年度は,ナフタレンをベースとした6員環カルボン,C(1,8-(Ph2S)2Naph) (1) の中心炭素にIMeカルベン金(I)(IMe = 1,3-ジメチルイミダゾール)が,2つ配位した2核金(I)錯体の合成を試みた。また,フリーなイミノ基を有する新しいタイプのカルボン配位子を合成することを目的に,非対称カルボン,C(Ph2SNTs)(Ph2SNH) (2)を合成し,その反応性について調査した。 C(1,8-(Ph2S)2Naph) (1)の前駆体化合物である[HC(1,8-(Ph2S)2Naph)]TfO (3a)の合成は,1,8-ビス(フェニルチオ)ナフタレンとジヨードメタンとをAgTfO存在化でアセトニトリル中で反応させることにより合成した1のジプロトン体を,塩基で処理することで合成した。次に,環状カルボン1を得るために,モノプロトン体3aと種々の塩基との反応を試みたところ,目的の環状型カルボンは得られずに,中心炭素が消失した1,8-ビス(フェニルチオ)ナフタレンが,ほぼ定量的に得られた。そこで,3aの対アニオンをヒドロキシアニオンに交換した3bを調製し,AgSbF6存在化で,1当量のIMeAuClと反応させることで,対応する単核金(I)錯体,[Au(1)IMe]SbF6 (4)を得ることに成功した。次に,3bと2当量のIMeAuClとを同様の条件下で反応を行ったところ,対応する2核金(I)錯体,[Au2(1)(IMe)2]2SbF6 (5)と単核金(I)錯体4の混合物として得られた。2核金(I)錯体の発光挙動に関しては,混合物にUV光を照らすことで,固体室温状態で青く発光することを確認した。 非対称カルボン配位子に関しては,当研究室で合成したHC(Ph2SN)(Ph2SNH)をN-モノトシル化することで合成することに成功し,種々の親電子剤との反応を試みた。
|