研究実績の概要 |
本研究課題では、高周期典型元素を含むπ電子の特性を理解するために、新しい分子デザインによる、トリプチシル骨格を基盤とする汎用性の高いアルキル立体保護基を開発し、高反応性π結合に十分な速度論的安定化を与え、第2周期元素の化学を高周期元素へ展開し、互変異性可能な高周期元素ケトン類縁体(R2E=Ch,E = Si, Ge, Sn, Pb; Ch = O, S, Se, Te)、および新規高周期典型元素不飽和結合をもつ化学種の創製を行い、基本的π結合の性質解明を目的とする。十分な安定性と反応空間を併せもつ高周期アルケン、アルキン、カルベンおよびアゾ化合物同族体を創出し、これら高反応性典型元素化学種を用いる小分子活性化を検討する他、これまで未解明であった典型元素π電子・π結合の特性解明を行い、 元素化学の学理構築に繋げ、学術的知的再生産を行うことを目的としている。 これまでに、研究遂行に有用と考えられる嵩高いアルキル置換基(Trp*)を開発し、高周期カルベン同族体であるゲルミレンTrp*2Ge:およびアルキン同族体であるジシリンTrp*2Si2の合成単離することが出来ている。単離したゲルミレンは単体硫黄、セレン等と速やかに反応し、対応するゲルマンチオンなどの高周期ケトン同族体を与えた。ジシリンについては還元反応により、対応するジアニオン種を与え、炭素化合物にはない新しい結合状態を創り出す事が出来た。また、これらの反応性を検討すると共に結晶構造解析にも成功した。
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