研究課題/領域番号 |
19K05427
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
加来 裕人 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (90299339)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 不斉分子認識 / ホスト-ゲスト化学 / デラセミ化反応 / ジアステレオ制御 / エピメリ化 / オキシマイケル付加 / ヒダントイン類 |
研究実績の概要 |
本研究では,光学活性なホスト分子の結晶場での不斉分子認識現象を基盤として,平衡条件下に複数存在しうる異性体混合物のうちから,単一のジアステレオマーの供給を目指して研究に着手した.また,環外に不斉炭素をもつケトン類に対しても同様に反応を検討した.本年度の成果は以下のとおりである. 1.環上に2つ(1つはα位)の置換基を有する環上ケトン類の調製. 2.α位でのエピメリ化平衡を利用するジ置換ケトン類のジアステレオマー制御法の開発に着手した.まず,(2RS, 4R)-2-(4-ブロモベンジル)-4-メチルシクロペンタノンのtrans-cis混合物をホスト分子A存在下アルカリ処理し,二日間撹拌した後,固体部分をろ別するとtrans-cis比が97:3のケトンが79%得られた.一方,ホスト分子をBに変更すると純粋なcis体が得られるようになった.ホストの種類を変更することで,得られるジアステレオマーが変化し,それぞれ純粋なものとして得られるようになった.なお,ホスト非存在下にはtrans-cis混合物が得られた(trans:cis=28:72). 3.これら反応の一般性を探るために,ベンゼン環上に他の置換基を有するケトン類および環外不斉炭素についても同様に検討し,光学活性なジアステレオマーを得ることに成功した. 4.6位に置換基を有するエノン類へのオキシマイケル付加-脱離反応を利用した光学活性3-アルコキシケトン類のジアステレオマー制御へと展開した.6-アリルシクロへキセノンに対して,触媒量のDBU存在下,メタノールのオキシマイケル付加-脱離反応を検討した.その結果,(R,R)-cis-2-アリル-5-メトキシケトンを収率44%で得た(99%de, 99%ee). 5.医薬品の骨格にも広く用いられているヒダントイン骨格の5位に置換基を有するものを調製し,デラセミ化反応を行うことで光学活性体へと導いた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書上,令和2年度分に記した計画は概ね順調に進行していると考える. その根拠は,1)アルカリ存在下でのエピメリ化条件下における光学活性ケトンのジアステレオマー制御法の確立.および,高純度のジアステレオマーが両異性体ともに得られるようになったこと.さらにその適用範囲の拡大を目指しゲスト化合物およびホスト候補化合物を多数調製し,様々な組み合わせで検討を重ねられたこと,2)ホスト-ゲスト間の不斉分子認識の様子をX線結晶解析に明らかにしたこと,3)種々のアルコールのエノンに対するマイケル付加-脱離の平衡反応を確立したこと,4)平衡下,6-置換シクロへキセノンのオキシマイケル付加-脱離反応により,低収率ながら純粋なジアステレオマーが得られたこと,5)5位に置換基を有するヒダントイン類のラセミ化の条件を確立し,ホスト分子存在下で光学活性体へと導けたことなどによる.
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今後の研究の推進方策 |
α位に置換基をもつ環状ケトン類の平衡下におけるジアステレオ制御法の適用範囲を広げるため,種々のケトン類(例えば,置換様式の違い,環の員数,環外不斉をもつケトン類,鎖状ケトン類など)に本手法を適用したい.さらに,アルコールのマイケル付加-脱離反応の平衡系から光学活性な2-アリル-5-メオトキシシクロヘキサノンを調製できたことから,多様な置換基を導入した他のエノン類へも適用し,ジアステレオ制御法への範囲拡大についても試みたい. 光学活性5-置換ヒダントイン類の生物活性には興味が持たれるので,応用研究を進めていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
<理由>当該年度は基礎的な平衡反応(ケトン類のα位のエピメリ化やヒダントイン類のラセミ化,アルコールのエノンへのマイケル付加-脱離反応)の確立と効率的な合成が可能と基質合成に時間を費やした.そのため,あまり多くの試薬を必要としなかった.これにより,無駄な出費を抑えることができた.光学活性体の純度の評価のための光学活性カラムは所属研究室のものを使用させていただいたため,新たな購入はなかった.なにより,新型コロナウイルス感染拡大の影響から,大学業務の多様化により研究活動が制限されたため,思うように実施ができなかった. <計画>物質供給を考えた場合,光学活性体を含む数多くの試薬及びガラス器具が必要となる.これにかかる費用が必要となる.また,調製したケトン類の純度の測定および,本手法により得られたケトン類のジアステレオ及びエナンチオ選択性,すなわち反応の活性評価を行うのに必要となる,光学活性カラムの購入に充てたい. さらに,本年度の成果を広く公開するために,英語論文校閲,論文投稿にかかる経費,学会発表費として使用する.
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