研究実績の概要 |
筆者らは,オルト位にアルキルアリール基を持つアルキニルベンゼンにトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)のような超強酸を作用すると,Friedel-Crafts(F.C.)型アルケニル化反応が進行し、2つのベンゼン環が縮環した7-9員環化合物を構築できることを既に報告している. 本研究は,1) 筆者自身が端緒を開いた超強酸を用いるF.C.型アルケニル化型の環化異性化反応を発展させて,従来法では合成が困難だった2つのベンゼン環が縮環した中員環化合物の合成法として確立すること,2)薬理活性も期待できる中員環を含む新しい含窒素複素環化合物群を創出すること,を目的としている. 本反応の基質の側鎖に窒素原子を導入することで,中員環を有する含窒素複素環化合物の合成を検討した.一つの窒素上にオルトアルキニルフェニル基を持つアミジンにLewis酸や塩基を作用すると,5-endo環化あるいは6-exo環化が進行することは既に報告しているが,アルキン末端部位にアルキル基を有し,異なる窒素原子上に芳香環を持つアミジンに室温でTfOHを作用させると,窒素原子上の芳香環がF.C.型でアルキン部位に付加し,ジベンゾ[d,g][1,3]ジアゾシンを定量的に与えることを見出した. アミジン部位をグアニジンに換えた化合物の環化反応も検討した.グアニジン部位にベンジル基を有する基質にTfOHを作用すると,F.C.型アルケニル化反応により生成するジベンゾジアゾシン誘導体と,窒素が6-exo-dig型で付加後脱ベンジル化が進行して生成したと考えられる2-アミノキナゾリン誘導体が得られた.窒素上のアリール基がフェニル基のように活性化基を持たない場合,Nアタックによる2-アミノキナゾリンの生成が有利となる一方,メトキシ基のように電子供与性基が導入された場合にはジベンゾジアゾシン誘導体の生成が有利になることがわかった.
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