高容量かつ安全性の高い次世代型二次電池の性能向上はグリーンイノベーションの重要課題である。現在、注目されている負極材料は蓄電池容量の大きなケイ素材料である。本研究では有機ケイ素材料のレドックス反応を基盤とした充放電可能な二次電池の開発を目指した研究を行う。しかし、本研究は研究代表者の健康上の理由で初年度途上で中途終了することになってしまったが、これまでに得た結果を以下に記載する。 酸化還元時に構造変化を抑えたケイ素ラジカルが希少金属を用いない高出力デバイスの負極活物質として優れた性能を示すことを明らかにした。ケイ素ラジカル負極活物質を用いた二次電池のレート特性を検討し、出力密度を上げても十分なエネルギー密度を保持していた。リチウム塩を含む電解質を用いた充放電時のケイ素ラジカルの分光学的解析から、充電時にSi-Li結合を形成し、放電時にこの結合を切断してケイ素ラジカルを再生することを明らかにした。また、新たなケイ素負極活物質の開発とレドックス特性を有する複数のラジカルを集積させることを目的として、二次元ネットワーク構造をもつ層状ポリシラン (SiH)nの化学修飾を検討した。層状ポリシラン(SiH)nをトルエンに分散し、Karstedt触媒を用いると芳香族アセチレン化合物へのヒドロシリル化反応が起こり、層状ポリシランを有機化できることを明らかにした。有機化した層状ポリシランは空気中で安定であり、種々の有機溶媒に可溶であった。特に、4-メチルフェニルアセチレンと反応させることによってマイクロメートルサイズの層状ポリシランの合成を達成し、このものが光応答伝導特性を示すことを明らかにした。ニトロキシルラジカル誘導体による層状ポリシランの官能基化は達成できなかった。
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