研究実績の概要 |
本年度は、芳香族サーキットに含まれる環外周部にヘテロ原子を導入した縮環ポルフィリン誘導体の1例として、窒素原子を4つ導入した四重縮環ポルフィリン(QFPyP)を合成し、その酸化還元挙動を検討した。QFPyPの合成では、まずアドラー法を用いて、5,10,15,20-テトラ(2-tertブチルピリジル)ポルフィリン(TPyP)を合成し、TPyPに7当量のN-ブロモスクシンイミドを加え、1,2-ジクロロエタン中で加熱還流することで、テトラブロモ誘導体(TPyPBr4)を得て、さらにTPyPBr4のクロロホルム溶液に、メタノールに溶かした酢酸亜鉛(II)二水和物を加え、加熱還流することで亜鉛(II)錯体(ZnTPyPBr4)を得た。既報に従い、ZnTPyPBr4に対して、Pd触媒を用いた縮環反応を行い、目的とするQFP誘導体の亜鉛(II)錯体(ZnQFPyP)を収率25%で得た。1H NMRスペクトルでは芳香族領域に3本のシグナルが見られ、分子の4回対称性を反映していた。合成したZnQFPyPについて、DMF中で電気化学測定を行い、以前当研究室で合成した、外周部に窒素原子を導入していないQFPと比べて、配位性イミン窒素を有するZnQFPyPの第一還元電位および第一酸化電位が、それぞれ正側にシフトしていることを明らかにした。さらにブレンステッド酸として、CF3SO3Hを加えることで、ZnQFPyPの外周部のイミン窒素がプロトン化され、還元電位が、+0.39 V正側ににシフトすることを明らかにした。
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