研究課題/領域番号 |
19K05437
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
森末 光彦 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (40403357)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ポルフィリン / 近赤外発光特性 / 薗頭反応 / Glaser反応 |
研究実績の概要 |
非晶性ポルフィリンが固体状態で近赤外発光する機構解明のために、凝集状態でポルフィリン環に近接配置しやすい電子豊富あるいは電子不足の芳香属性架橋基をアセチレンを介して系統的に導入したポルフィリン誘導体の合成に取り組んだ。臭素基を導入したポルフィリンと、別途合成したアセチレンとを、パラジウム触媒と銅を助触媒として使用した薗頭反応による合成を行なったところ、副反応であるGlaser反応が併発し、これによる副生成物の除去が非常に困難であることが明らかとなった。副反応であるGlaser反応は、一般に銅アセチリドが二量体を形成し、これが中間体となっていると考えられている。そこで本研究では、適切な溶媒の選択により銅アセチリドの二量体形成をを効果的に抑制し、所望の薗頭反応を効率的に進行させる条件を決定した。ただし、この反応条件は電子不足の芳香属性架橋基にのみ適用可能であり、電子豊富な芳香属性架橋基では効果的ではないことが明らかになってきた。この場合は、アセチレン末端のシリル保護基を、反応系中で徐々に脱保護することにより解決できることが明らかとなりつつある。この最適条件の決定は、次年度以降の検討課題である。 また上述の合成検討と併せて、固体物性に関する検討も併せて推進した。凝集状態でポルフィリン環に近接配置できない長鎖アルキル基を導入した芳香属性架橋基を導入すると、固体凝集状態での吸収スペクトルは溶液中のそれとほとんど変化がなかった。これに対してコンパクトな芳香属性架橋基を導入した場合では、吸収スペクトルの形状は溶液中とは全く異なり、大きなレッドシフトを示した。詳細を慎重に検討する必要があるが、このことは分子間での励起子分裂を示しており、芳香属性架橋基の立体障害が分子間相互作用の大きな支配因子であること、また固体近赤外発光特性がこれと関連していることが明らかとなりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成上の課題克服により、効果的な合成手法の確立に向けた見通しが立ったことに加え、予備的に単離した化合物の物性評価により、当初の作業仮説を裏付けるような結果を得た。詳細を今後詰める必要があるものの、概ね当初の実験計画に沿った研究推進が見込める状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
確立した合成手法に基づいて、電子豊富あるいは電子不足の芳香属性架橋基をアセチレンを介して導入したポルフィリン誘導体を系統的に合成する。これらの化合物を、溶液中および固体薄膜状態での吸収・発光特性と比較しながら検討を進める。
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