研究課題/領域番号 |
19K05440
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
柘植 顕彦 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (80179986)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アンビデキストラウスゲル化剤 / 水素結合 / アミノ酸骨格 / 位置異性体 |
研究実績の概要 |
近年、ソフトマテリアルが注目されている。 その中でゲルは典型的なソフトマテリアルであり、物質科学の中で最も重要な分野の一つであり、ゲルのしなやかでやわらかいという特性を活用することで、新規機能性材料、あるいは生体材料の開発が可能になるものと考えられる。 これまで多種多様なゲル化剤が開発されているが、それらは水をゲル化するヒドロゲル化剤と有機溶媒をゲル化するオルガノゲル化剤とに大きく分類することができ、それぞれ様々な機能性を付与した「機能性ゲル化剤」としての開発研究が世界中で活発に展開されている。 しかしながら、水と有機溶媒(特に非極性な有機溶媒)の両方をゲル化できるゲル化剤(アンビデキストラウスゲル化剤)は、非常に限られており、これまで系統的な研究例はほとんどない。 そこで本研究では、両親媒性化合物を基盤とした新規アンビデキストラウスゲル剤の開発を目的とした。 グルタミン酸骨格とベンゼン環を基盤とした部位に、疎水部として長鎖アルキル基、及び親水部としてエチレングリコール鎖を導入した多様な化合物群の合成を行い、そのアンビデキストラウスゲル化特性を検討した。 今回は、特に、ベンゼン環のオルト位、メタ位、パラ位に親水基を導入した位置異性体を合成した。 その結果、興味あることに、パラ体では、アンビデキストラウスゲル化特性を示したが、メタ体、オルト体は示さなかった。 この理由として分子形状に依存した溶解性、及び分子の集合特性が考えられるが、詳細は検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
優れたアンビデキストラウスゲル化能をゲル化剤分子に付与させるためには、水と有機溶媒に可溶であることが要求される。 すなわち両親媒性的な特性が重要であることから、疎水性基と親水性基を併せ持つ化合物の合成を行った。 グルタミン酸骨格とベンゼン環を基本とし、疎水性アルキル鎖と親水性エチレングリコール鎖を、オルト位、メタ位、パラ位に導入した化合物群を合成した、ゲル化特性を調べた。 その結果、位置異性体間でアンビデキストラウスゲル化特性を大きく異なることなどを見出しており、研究は順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
分子形状が外部刺激により変わる系を構築し、分子の形とアンビデキストラウスゲル化能との相関関係について詳細に調べる。 具体的には、疎水基と親水基を併せ持つ二置換アゾベンゼン型の化合物において、光異性化によるシス体とトランス体間の平衡を活用することで、アンビデキストラウスゲル化特性の制御を実現する。 さらに、グルタミン酸骨格、アスパラギン酸骨格以外の主骨格と芳香環を基盤とした化合物群の合成とゲル化特性を調べる。 ここでは分子構成ユニットの水素結合部位、芳香族部位に着目して、長鎖アルキル基と親水性長鎖部位を併せ持つ化合物の系統的な合成を行い、アンビデキストラウスゲル化能を有するゲル化剤の開発を行う。 ゲル形成には分子ネットワークの形成が不可欠であり、水素結合部位、及びπ-π相互作用を示す芳香族部位は重要な働きをする。 具体的には、アミノ酸部位として、グルタミン酸にバリン、ロイシンやフェニルアラニンを結合させた部位の導入を行う。 また、芳香族部位としては、ベンゼン環の代わりにナフタレン、アントラセン、ピレン部位を導入する。 合成した化合物のゲル化能を調べ、それらと分子構造との相関関係を明確にする。 次に非相溶系二成分から成る単一ゲル層の特性解明を行う。 アンビデキストラウスゲル化剤を用いることで、溶液状態では混ざることのない二成分系(例えば、水とトルエンなど)をゲル化することができる。 すなわち、非相溶系の二成分(例えば、水とトルエン)が単一のゲル層として得られることが期待でき、このゲル層の構造特性には非常に興味が持たれる。 この特性について、SEM、AFM等を駆使して詳細に検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
位置異性体間でアンビデキストラウスゲル化特性を大きく異なることを見出しており、この点の詳細に検討を行うため。 具体的には、疎水基と親水基を併せ持つ二置換アゾベンゼン型の化合物において、光異性化によるシス体とトランス体間の平衡を活用することで、アンビデキストラウスゲル化特性の制御を実現する。
|