研究実績の概要 |
今年度は、前年度に引き続き、結晶状態でりん光発光性を示す、渡環構造を有するtrans-ビス(サリチルアルジミナト)白金(II)錯体をモチーフに用い、新しい発光色制御法の検討を行った。これまでに、サリチルアルジミナト配位子の3, 4, 5, および6位に電子求引性のメトキシカルボニル基を導入すると、その置換位置により発光色が大きく変化することをこれまでに見出している。さらに、電子供与性のメトキシ基を置換基を導入した場合にも、電子求引性のメトキシカルボニル基の場合とは異なる効果が得られることも見出している。本研究では、この白金錯体に電位供与性の置換基と電子求引性の置換基を同時に導入することで、相乗的な効果が発現することを期待して新しい分子設計を行った。置換基の組み合わせ方によって、長波長シフトする組み合わせと、短波長シフトする組み合わせ、あるいは、打ち消しあう組み合わせが考えられる。本年度は、短波長シフトする組み合わせとして、4位にメトキシ基、そして、5位にメトキシカルボニル基の両方を有する錯体を新規に合成した。まず、合成の鍵となる、メトキシ基とメトキシカルボニル基を有する新規サリチルアルデヒドの合成法を確立し、配位子に変換したあと、目的とする白金錯体を得ることができた。錯体の同定と純度の確認は、NMR、IR等の分光学的手法により行った。合成したこれらの錯体は、常温あるいは77Kの低温における結晶状態において、黄緑色の発光を示した。これらの結果は、trans-ビス(サリチルアルジミナト)白金(II)錯体における、置換基の誘起効果を相乗的に利用した新しい発光波長制御法となる。
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