研究課題/領域番号 |
19K05442
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
齋藤 慎一 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 教授 (80283076)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分子マシン / ロタキサン / 動的挙動 / インターロック化合物 / 大環状フェナントロリン |
研究実績の概要 |
ロタキサンは分子マシンの構成要素となる重要な分子の一つであり、環構造とダンベル構造が共有結合を介さず結びつけられている化合物である。ロタキサンに分子ブレーキ機能(回転運動のオン/オフの機能)を付与することにより、ダンベル構造の回転というロタキサンの動的挙動を制御可能になる。このような分子はこれまでにない特徴をもった分子マシンとして機能する。そこで応募者はロタキサン特有の分子構造を活用した分子ブレーキを創出できるのではないかと考え研究を推進した。 今年度は動的挙動が制御可能な[2]ロタキサンの合成を進め、機能発現に必要となる基本骨格を有する[2]ロタキサンの合成に成功した。具体的には研究代表者らが独自に開発したロタキサン合成法を活用することにより、剛直な軸構造を持ち、巨大なトリアリールメタン骨格をダンベル部位に含む[2]ロタキサンの合成に成功した。次に軸構造に様々な置換基を導入した結果、導入した置換基の構造により[2]ロタキサンの配座が制御できることを明らかにした。例えばアミノ基、あるいはアミド構造を有する[2]ロタキサンにおいては環構造に含まれるフェナントロリン部位と窒素原子に結合した水素原子が水素結合することにより[2]ロタキサンの配座が変化した。また、新しい構造を有する大環状フェナントロリン、ならびにらせん型のフェナントロリン誘導体の合成にも成功した。こうしたフェナントロリン誘導体は今後[2]ロタキサンの合成へと活用してゆく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的化合物である[2]ロタキサンの合成は完了していないものの、2020年度には合成できる目処が立っている。すでに[2]ロタキサンの動的挙動に関する知見も得られつつあり、分子ブレーキ創出に関する障害は少ない。合成上の問題が発生した場合にはこれまでの知見を踏まえ官能基変換のルートを変更するなど、問題を克服していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
目的化合物である[2]ロタキサンの合成を行い、合成した化合物の動的挙動について検討を進めたい。とりわけNMRを十分に活用し、分子ブレーキとしての評価を進めてゆく予定である。NMR測定上の問題が発生した場合には多くのシグナルを与えるプロトンNMRの代わりに感度がよく、シグナルが少ない19FNMR を活用することにより評価を進める。そのため、必要に応じてフッ素原子で置換された類縁化合物の合成も行う。
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