研究課題/領域番号 |
19K05445
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
檀上 博史 甲南大学, 理工学部, 教授 (70332567)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環状パラジウム三核錯体 / 分子接合素子 / ヤヌス形 |
研究実績の概要 |
本研究ではこれまでに、主に環状パラジウム三核錯体の合成法の確立、収率の向上と、構造多様化に関する合成検討を種々行ってきた。これらの錯体はヤヌス形分子接合素子としての機能が期待されているが、そのためにまず分子認識可能な空孔の大きさ、形状などについて、その多様化法を検討した。基礎的な検討では、3,5-ジブロモピリジンを原料として用いることで、環状三核錯体の構築に成功しているが、これをその他の置換ブロモピリジン誘導体で実施した。その結果3-ブロモピリジンでは前駆体である単核錯体が得られず、また5位にフェニル基などを導入した3-ブロモピリジン誘導体でも同様に環状三核錯体の構築には至らなかった。これらの結果より、環状三核錯体の構築には、骨格となるピリジル基にブロモ基をはじめとする電子求引性基の存在が不可欠であることが示唆された。一方ブロモイソキノリンを用いた合成は成功し、お椀形の空孔が拡張された新たな環状三核錯体が得られた。一方でこれら環状三核錯体の分子認識挙動に関する基礎的な検討を行った。この錯体はホスフィン配位子の選択に応じて中性およびカチオン性の状態を取り得るが、カチオン性のものについては硝酸イオンをはじめとするアニオンを強力に包接することが確認されていた。そのためその他のアニオンをもちいて本骨格のアニオン認識挙動について評価を行ったところ、ホウフッ化物イオンが効率よく取り込まれる様子が単結晶X線構造解析により確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画よりも、合成における構造の許容性が低いことが判明し、環状三核錯体構築の際に利用可能な骨格についてより詳細な議論と、それらを事前に合成するための時間が必要となった。またアニオン包接についても当初は溶液中で比較的活発に交換が起こっているものと期待されたが、交換に用いることができるアニオン種についてもある程度選択する必要があることが示唆されたため、要検討となっている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に得られた知見をもとに、合成可能な環状三核パラジウム錯体および白金錯体について、多様な構造をもつものを合成し、それらの構造評価と溶液中での分子認識挙動評価を行っていく。特にイソキノリン骨格をもつ三核錯体については、その構造多様化が比較的順調に推移していることから、これを一つの主軸として合成を進めていく予定である。一方アニオン種の包接挙動評価については、リン酸イオンを中心に会合挙動を評価していく予定である。これはリン酸イオンが二価ないし三価の多価アニオンであり、静電相互作用を利用しやすいこと、置換基導入により高次構造への展開が期待されることなどが理由である。
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次年度使用額が生じた理由 |
基本的には試薬や消耗品の購入など計画通りに執行したが、一部研究に遅れがあるため、昨年度実購入の試薬等が一部発生している。本年度は昨年度に調達予定であった試薬(主に遷移金属化合物試薬、NMR用重溶媒)を購入すると共に、新たに検討課題となっている環状三核錯体構築のための原料試薬を購入する予定である。
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