研究実績の概要 |
前年度に引き続き、本年度もパラジウム環状三核錯体の陰イオン包接能の評価と、官能基化に関する検討を行った。陰イオン包接能評価については、前回報告した硝酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、およびヘキサフルオロアンチモン酸イオンに、硫酸水素イオンおよび過塩素酸イオンを加えて詳細な評価を行った。NMR測定による溶液評価により、イオンサイズと陰イオン認識能には強い相関があり、基本的にはより小さいイオンに対して強く会合する傾向が確認された。また錯体調製時に用いるジホスフィンについてもスクリーニングを行ったところ、従来の1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンの他、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンを用いても安定な環状錯体が得られることが確認された。一方で二つのジフェニルホスフィノ基の間のリンカー部分が2炭素でないジホスフィンでは、中間体であるパラジウム単核錯体が安定な状態で単離できなかった。スルホン酸イオンを強く認識する特性を活かし、メチルオレンジおよびアリザリングリーンGなど水溶性色素を用いた抽出実験を行ったところ、環状三核錯体を含むクロロホルム相によってこれらの色素は水相から効率良く抽出されることが確認された。 これらの環状三核錯体の官能基化も継続して実施し、アミド基を介して各種官能基が導入可能であることが確認された。5-ブロモニコチン酸と1-アミノメチルピレンから得られたアミドを出発物質としてパラジウム環状三核錯体を調製したところ、この錯体は溶液中でフラーレンC60と会合していることを示唆する結果がNMR測定より得られた。
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